第134話 強制契約
「ねぇ? どうするの? メフィストファレス。君の仲間…二人とも倒れちゃったみたいだよ?」
俺は残り1人となったメフィストファレスに向かって言う。
7体いたメフィストファレスの分身体も6体、俺が難なく消し去った。
「なぜ……なぜなんです? なぜ煙の分身体に攻撃が当たるのです? なぜあなたの剣と盾は煙にならないのです? それに、なんで剣を一度に7本も操れて………だいたい、それだけの量の剣をいつ作ったと……」
「ふふ、すこし君はボクを舐めすぎてたんじゃないかな?」
俺は一度言ってみたかったセリフを言った。
俺は中二病じゃないけれど、こういうセリフは言ってみたいものだね。
まぁ、ただ単に無効化する効果をもつ剣な盾を作っただけなんだけど。
「……こうなったら、俺の全力をかけて、あなたにアイテムを作らせるしかないようですね?」
「ふぅん、でもボクは作らないよ? そんな敵に塩を贈るような真似、するわけないじゃないの」
そう言い返してやったが、彼は全く諦めていないみたい。
こういうの、あきらめが悪いって言うんだよ。
だけど、なにか奥の手があるのは確かみたい。
めっちゃニヤニヤしてるし。
「いいえ、作りますとも。『あなたは剣をつくる』でしょう。それも『メフィストファレスの望んでいる剣』をね……」
バカだなー。何を言ってるんだろー。
でもなぜだかわからないけれど、頭の中でメフィストファレスの言った言葉が何回も木霊する。
妙に、気になるんだ。
俺はふと、自分の目の前をよーく見た。
なにか、歪な形の物体が浮かんでる。
かろうじて、剣であるということがわかるんだけれど…。
……あれ? 本当になんだこれ? 俺の目の前に剣が一振り…こんなのいつ作ったんだろう?
ダークマターで作ったんだよな? これ? これってまさか……。
メフィストファレスはその俺の目の前にある剣を引っ掴み、こう言った。
「いやー! ありがとうございます。恩にきりますー! まさかこんな簡単に、一瞬で、何もないところから、勇者の剣を壊す悪魔の剣……『ドロップロット』を作りだすとは! さすがアイテムマスターですなぁ…最初からこうすればよかった!」
ええ? は? どういうこと?
「いやぁ、すこし種明かしをしましょう。俺の力の一つなんですね! 『言霊強制契約』って言うんですが…俺が喋った内容が強制的な契約として相手の頭に残るって技なんですよー! 相手は俺の言った通りの行動をする。 そのかわり俺は多大な対価を払わなきゃいけないんですけどねー!」
え、怖…。なにその技、チートすぎだろ。相手に無理矢理言うことを聞かせるとか…。
「そうそう、俺が払う対価はですねー? 『本拠地の崩壊』なんですねー! いやー、困りましたねー! 住むところがなくなっちゃった!」
そう、メフィストファレスが言った途端、ものすごい音が、この空間に響き渡る。
壁がひび割れた。
ここが崩れていっている。
「さあ、ここから頑張って逃げてくださいね? あ、姫はもう、いらないからそのままお返します。代わりの物がありますし。それと、その悪魔二匹の死体ですが………」
メフィストファレスはニィッと口角を上げ、2体の悪魔死体にいつのまにか触れ、煙で囲いつつ、大声を張り上げた。
「強制契約! 生き返らせてあげますから、ドラゴンになって、その者達の逃亡を阻止してください! 名前は…ジェラシードラゴンと、ムーンポイズンドラゴンでいいですかね。 さぁ、頑張ってくださいね! バッハハーイ!」
「ま、まてっ!?」
奴は煙となって去って行った。くそっ……タダで物を作らされたっ!
悔しさに、俺は唇と拳をギュッとにぎった。
その奇行の一部始終を見ていたカルアちゃんは、心配そうに言う。
「あ……アリムちゃん……」
「うん……あ、大丈夫だよ…多分」
まぁ、確かに俺自身は大丈夫だけれど、このままじゃ、サマイエイルは復活するだろうね。
そうこうしている間にもここの崩壊が止まらない。
ミカとバッカスさんは、二匹のドラゴンに応戦している。
俺はミカに言う。
「ミカ! 本気で倒しちゃっていいよ!」
「うん? うん、わかった!」
その途端、現れる超巨大魔法陣。ミカの一番の魔法だ。
あまりの魔力量にバッカスさんもカルアちゃんは驚いている。
魔法発動と同時に当たりは白くて黒い光に包まれる。
成る程、ミカはこの場所も『味方』と認識したみたいだ。
放たれたミカの魔法は悪魔のドラゴンを滅ぼし、影で出来たこの場所を癒していく。
崩壊は止まり、残っているのは二頭の悪魔だったドラゴンの死体だけ。
俺はそれらを素早く回収する。
やっぱり、ドラゴンはドラゴンだし、何かの素材になるかもしれないからね。
「さぁ……出ようか。色々報告しないと」
「そうだね…でもとりあえず、カルアちゃんが無事でよかった」
「カルアちゃん、大丈夫? 怪我ないよね? あの変態魔物になにかされてない?」
「はい……はい…大丈夫です。みなさんご迷惑おかけしました……」
俺らはこの場所をすぐさま去った。
俺らが居なくなった途端、再び崩壊が始まったのか、影から出てくると同時に、目印の木すらもがなくなった。
その光景を見届けた後、俺らは来た時と同じようにして城へとすぐにもどった。
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