第135話 帰還

 全速力で走ったから、数秒でメフィラド城に着いた。

 国王様達はロビーで待機している。

 その光景はまるでテレビドラマでよく見る、手術が成功するのを祈っている家族のようだ。


 カルアちゃんの姿を見るなり、国王様は常人では考えられないようなスピードでこちらへとすっ飛んできた。



「おぉ……カルアよ……」

「お父様……ご心配おかけしました」

「いや……いいんだ。帰ってきてくれればそれで。あぁ……」



 これにて、カルアちゃんと国王様を会わせることに成功。

 国王様は目を涙ぐませながら、深くカルアちゃんを抱きしめた。


 せっかくカルアちゃんが戻ってきたと言うのに、大臣さんや騎士団長さんの顔が暗い。

 こういう時って、喜ぶ表情をするもんじゃないの?

 何かあったのだろうか?



「大臣さん、何かあったんですか? せっかくカルアちゃん助かったのに、みんな深刻そうな顔してますよ?」

「ああ、カルア姫様を助けてくださってありがとうですぞ。しかし実はですな______」



 俺はカルアちゃんのお母さん、つまり、女王様の遺体が何者かによって盗まれたことを聞かされた。悪魔が犯人の線が濃いらしい。

 そういえば、メフィストファレスが『代わりがいる』って言ってたような。



「大臣さん、やっぱり悪魔だと思いますよ。カルアちゃんを悪魔の幹部3人が見張ってて、そのうちの一人……捉えた悪魔が大幹部だと言っていた、メフィストファレスって奴が『代わりがいる』って言ってました。恐らくそれが…」



 大臣さんの顔がみるみるうちに険しくなる。

 憤怒していることは目に見えてわかる。



「妃様のことでしょうな。……あの方の御遺体を忌まわしき悪魔神の生贄に使うなど、なんたる屈辱っ…!」



 そう言い放った後、大臣さんはこのことを、王様に耳打ちで知らせた。

 国王様はとてつもなく悲しそうな、悔しそうな、憎しみに満ちた表情になった。

 そらゃそうだ、娘を誘拐された挙句、今度は自分の奥さんを攫われるんだもんね。

 憎んで当然だ。

 


「くそ……どこまで我らを邪険にすれば気が済むのだ。悪魔共め…」

「お父様……」



 カルアちゃんが王様の怒りを鎮めようと強くてを握りしめる。

 その時、カルアちゃんの背中からなにやら、薄黄色い紙が一枚落ちてきた。

 それを騎士団長さんが拾う。



「ん? カルア様、なにやら紙キレが落ちましたが?」

「え? なんですか? それは」



 騎士団長さんは紙を裏返してみてみた。

 それを見た彼は、目を見開いて驚愕している。



「悪魔からの……手紙です……」

「なっ…!?」



 一同騒然。

 罠が仕掛けられているかもしれないと勘ぐった俺は、とりあえずその紙を遠目から鑑定してみたが、特には罠はないみたいだ。

 内容が気になる。




「読み上げてみよ」

「は、はい」



 国王様に命令され、騎士団長さんは手紙を読み上げる。



『皆様、どーもこんにちわ。

 俺はメフィストファレスという者ですー! 

 同胞がお世話になっているようですねぇ? 

 別に殺してもらっても構いませんよ? 

 どうせすぐに作って簡単に殺せる唯の捨て駒ですから。

 そうそう、妃様の死体ですがね? 

 すでにこちらが悪魔神様の御身体として活用させていただいてますので、取り戻そうとしても手遅れですよ?

 悪魔神様の力が完全に戻り、ちゃんとした復活まであと3日といったところでしょうか? 


 そういうわけで、私達は貴方方に戦線布告します! 

 単刀直入に言うとですねー、血で血を洗う、戦争をしましょー。悪魔 対 人間で! 

 悪魔神様を封印した王家の忌々しき血筋を絶つために、メフィラド王国を滅ぼさせていただきまーす! 

 というわけで、悪魔神様復活当日、私達は今居る全幹部と多数の悪魔、魔物を引き連れてそちらに伺いますので。 

 皆さん、安心して死んでくださいね!


       道化 メフィストファレスより』




 あたりは完全に静まり返る。3日後、3日後悪魔と戦争をして、さらに悪魔神も復活する…だと?  こりやぁ…忙しいことになりそうだ。


 だけれど、こちらとしても好都合というべきか、悪魔を全滅させるチャンスと言える。




「ふぅ……」



 王様が一つ溜息を吐いた。



「ゴルドとオラフルよ。今日の早朝、全騎士団員と全兵を集合させ、この国のギルド全て、そして協力してくれそうな友好国に悪魔と戦争をすると伝えろ。そしてSSSランカー3人にも呼びかけろ。Dランク以上の冒険者もなるだけ集めてくれ。また、国民に避難するように言ってくれ…いいな」

「了解しました」

「御意」



 国王様から命令を受けた大臣さんと騎士団長さんは、一礼した後、去っていった。

 ミカとカルアちゃんも、カルアちゃんの部屋へと一旦帰るみたいだ。

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