第132話 VS.性欲と嫉妬の悪魔

≪side ミカ≫



 私はアスモデンスとか言う、変な奴、もとい変態と対峙していた。



「な……なに!? 魔法が効かないだと?」



 奴はさっきから魔法を連発してくる。

 下ネタも連発してくる。うんざりしちゃう。さっさと倒さないと。


 魔法は全て、アリムが作ってくれた弓が吸収してくれていた。



「ねぇ、そろそろいい? 倒すよ?」



 私は力を込めて弓を引きしぼる。

 頭部に当たったら一撃で倒せる程、明日アスモデンスと私はステータスに差が開いてると、相手から流れてくる魔力でわかる。


 私は確実に当たるよう、弓神奥義の技の一つであるマーキングを相手の牛みたいな頭部に指定する。

 マーキングの効果は、矢がどの方向に飛んでいっても絶対に、その場所に当たること。

 もう、これは勝ち確定ね。

 



「はぁ…仕方ないか。おい小娘、お前、好きな奴いるだろ?」



 あれ、いま一瞬、牛の目が光った気がしたような…。

 まぁ、関係ないか。

 とにかく好きな相手がいるから、それがどうしたというんだろね。



『俺はな、そいつの恋愛事情を知ることができる。そういう悪魔だからな。知ってるか? お前の彼氏…お前より、そう、そこにいる姫様の方が好きなんだってよ』



 言葉で惑わす作戦かな? でも意味はない。15年も一緒に居て……それにカルアちゃんと添い寝したことについても謝ってくれたし、お詫びに…その…抱きしめて寝てくれた。

 それはないだろでしょう。

 


 ……でも……でも……もしかしたら……あれ? もしかしたら……? えーっと…あれ?



『だってそうだろ? まず初対面の奴と添い寝なんかするかよ? いくら頼まれていたとしてもだぜ? それに対し、お前はどうだ? 添い寝し始めたのは最近なんじゃねぇのか?』

「いや……ちがう……アイツは………」


 

 体が震える。涙が出てくる。

 お、おかしい。なんで!? なんでカルアちゃんを恨み始めてるの? さっきまでそんなこと全く考えてもいなかったのに! あの娘と私は友達よ! それに有夢は私のこと好きだって……。



『自分のこと好きだっていってもらったのか? そりゃ思い上がりだろ。ただ再会できた喜びで勢いで告白されただけだって。 有夢が本当に好きなのはカルア姫。だって地位も権力も金もあるし、容姿端麗だし』

「う…………あ………カルアちゃ…ちがう……有夢は…」



 ちがう、ちがう、ちがう! 有夢は私のことが好きなの! 私も有夢のことが好きなの! ちがう、それは絶対に………。



『ちがうと言い切れるのか? ならば証拠をあげてやる。 なぜ、カルア姫には大守護がついてる装飾品をよこして、お前には大守護をよこさない? 教えてやろうか? それはな……』

「嫌だ……嫌だ…違うの…違うのぉぉ……」

『お前より、カルア姫のが大事だからだ。向こうは守るべき人間。お前は…さっさと目の前から消えて欲しい人間』

「ちがう……ちがう……私と…彼は…幼馴染で……ずぅっと一緒で……」



 もう…やめて……お願い……もう……もうやだぁ……。



『幼馴染? ふん、笑わせるな。ゲームより負けて、約束ほっぽかれて置いてかれる幼馴染がどこにいる? お前はゲームより、有夢にとって存在価値が下なんだよ。つまり、お前のことが嫌いなんだ』

「それは…………………………………………」

『あぁ、そうだ、もう一つ証拠な。なんでカルア姫は"ほっぺたプニプニ"を知っていて、お前は知らなかったんだろうな?』

「うう……あ……………」



 有夢が私のこと好きじゃない? 好きじゃないのかなぁ…あは、あはは。



『一つ、いいこと教えてやる』


 

 え、な…なに……?



『ライバルは減らせばいいんだよ。ほら、お前の本当の的はどっちだ? 俺か? 違うだろ? お前の恋を邪魔する……そのドロボウ猫だろ? ほら、いまその構えてる弓の方向を変えて』



 弓の方向を変えて……。



『射る! それだけで有夢は振り向いてくれるさ』



 射る…有夢が私に振り向いてくれる……。ドロボウ猫……射る…。



 私は絞っていた弓の方向をドロボウ猫の方に変え、矢から手を離した。


 矢はカルアちゃんの方向に向かって………。



 いかずに、アスモデンスの真横あたりで急に方向転換して、その牛頭に矢が刺さった。


 ……[弓神奥義・極一の射】……マーキング……解くの忘れてた……。


 それと同時に、カルアちゃんに抱いていた嫉妬の気持ちが晴れていく。


 だってそうじゃない。有夢が私のこと嫌いなら、降ってくるガラスの破片から庇ってくれないし…。大守護のことだってそう。彼は私を強くして、何日も何日も魔物を倒し続けて私を鍛え、さらにはたっくさんの贈り物をくれたじゃない。

 これが愛されてない? なにを私はバカなことを考えてたのかしら。

 それに、カルアちゃんとはあいつは確かに添い寝した。だけど抱きしめてまではくれてないはずだもんね! ふふん!



「ぬおおおおおおおおおっ!? なぜだ? なぜ俺の幻を解けた? 一体どうやって!?」



 あぁ、幻だったのね。

 通りで私が死ぬ前のことまで知ってると思ったわ。

 あれは私自身の記憶ね。

 それにしてもこれが魔法だったら、強さの差で私には効かないはずだから……やっぱり、特殊能力とかそういう類なのかな。

 いやー、マーキングしといて大正解だったわね! 方向が思いっきりずれてたから、頭を全部は潰せはしなかったけど、結果オーライってね!



「クソがァァァ!? こうなったらこっちダァァァァァァ」



 アスモデンスの羊の方の目が光る。


 息遣いが荒くなって…身体も……あつい…すごく…。切なくなって……。

 えーっとこの感覚は…。

 あっ____________



「ぐははは……俺の羊魔眼は性欲増強! 身体があついだろ? 立てないだろう? 下半身が寂しいんじゃないのか? お前は小さいからな、俺のが入いるかわからねぇが、女に生まれてきたことを後悔させてや_________ぶげらっ!?」



 やっぱり、性欲だったか。

 私は、アスモデンスの羊の頭を撃った。



「女に生まれてきたことを……なんだって?」

「な…なぜ、貴様、俺の性欲増強をくらってそんな平気な顔をしていられる!? なぜだ? なぜだぁぁぁぁぁっ!」

「さあ、なんででしょうかね? あの世でじっくり考えるのね」



 そう言いながら、私は弓の弦を力一杯振り絞った。



「ぐが…やめ…やめろ……」



 私はアスモデンスの真ん中の人間っぽい頭部に矢を放った。



「うがぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 悪魔の頭は弾け飛んだ。

 奴からSSランクの魔核が一個出現した。

 倒せたということね。



 ……ふぅ。少し、種明かしをするね。私は前々から、アリムに"ゾーン"…。自分が等速で、周りが遅く見える状態について教えてもらってたの。


 ほんと、悪魔のあの術は強力だったわ………。うん。


 でもね、私は周りがゆっくり見えている間に必死こいて……その……全力でアリムの匂いとか…一緒にお風呂入ったこととか……添い寝とか………考えて我慢して……ね…アムリタを取り出して飲んだの。


 もちろん、全快したわ。


 でも……なんでだろ。なんか寂しいなぁ…。身体の火照りと、変な…気持ちはなくなったんだけど……。


 うーん……この事件が終わったら、またアリムと一緒にいる時間が取れるはず!

 その時、スキンシップをたくさんとればいいのよね。


 あ……でも数日は我慢しないと …。

 きっとこれから忙しくなるものね。

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