第127話 悪魔

「くそっ! ばれちまった! まさか勇者が居るなんて聞いてねぇぜ、ここは一旦トンズラこくとして……」



 俺は勇者じゃないんだけれど…。まぁ良い。

 ミカは瞬間的に、その者に念術をして身体を念で縛りあげ、その者の自由を奪った。



「逃がさないよ」

「ぐっ……!?」



 俺はその隙に魔力を0にする、手枷、足枷とステータスを大幅に下げる鎖3本を奴の身体周りに直接、作り出してその者を拘束した。


 騎士団長さん、騎士さん達は剣を抜きその者に向かって構える。

 大臣さんは何やら杖のような物を取り出し、先端を向けている。



「ミカ、もう念術といても大丈夫。拘束した」

「うん、わかった」



 念術を解かれた紫色の者は苦しそうに悶え、息を荒くしていた。

 ミカは少しきつく縛りすぎたみたいだけれど、そんなことはどうでもいい。

 


「くっ………はぁ……なんだこの魔力の強さは……」



 その者に向かって騎士団長さんは問う。



「貴様は何者だっ!! 姫様をどこにやったっ!?」

「んなもん、いうアホが居るか? 俺は自爆できるんだよ。聞かれる前に爆発すりゃーいいんだよ! バーーーカ、ギャハハハッ」



 騎士団長さん達は警戒する。俺はミカの前に庇うように立ち、念のために爆発に備える。

 だが、その者は何かしらの動作をしようと身体をぐねぐねし始めたが、何も起こらなかった。

 そりゃそうだ。俺の拘束具はそういう効果だもん。



「なにも起こらぬではないか」

「あ、あれ? なぜ…?」


 

 俺は説明してあげる。



「その拘束具はボクのお手製で、オリハルコンでできてるからすごく頑丈だし、相手の行動を制限する効果もあるんだよ。説明するの忘れてたね」

「んな…っ!? くそっ……だが、言わねぇからな。絶対に。あの方のために」



 騎士団長は剣を構えたまま、その者に近づく。



「ふむ、いろいろ聞かなきゃいけないな。身体に直接聞くしかないか? 本当はあまりやりたくないんだが……まずは姫様の居場所、それから目的、お前が何者か、"あの方"とは誰か」



 騎士団長さんがこの者を尋問部屋へ移動させようとしたその時、国王様とテュールさん、ルインさん達4人組の計6人がこの場に到着した。



「カルア、カルアはどうしたんだ!? 説明しろゴルドっ!」

「はっ………私共の力不足で……姫様が誘拐されてしまったようです……この者が姫様に化けておりました」



 それを聞いた王様から、ものすごい殺気が放たれる。



「な……………な……………な……………貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? カルアをどこにやったぁぁぁぁぁっ!!」



 国王様の怒号と共に、この部屋マルッと囲むように巨大な魔法陣が敷かれた。

 やばいだろ、これ。国王様、SSランカーぐらいの魔力はあるぞ。

 ティールさんが必死になだめる。



「お、お父様、落ち着きください! ここで"アレ"を召喚したら大変なことになります! ……ひとまず、此奴から情報を引き出さなければ!」

「カルアは、我が妻の形見……大事な娘っ! 此奴がっ…カルアをっ……!」



 未だ興奮気味の国王様をルインさんなど他の人もなだめ始めた。


「落ち着いて、父様……気持ちは皆同じです。ここに居る全員が」

「ふぅ……はぁ……ふむ、悪いな、取り乱した。ゴルドよ、早くそ奴から情報を引き出せ」

「はっ!」



 騎士団長さんはそうして、無理矢理、その者の首根っこをひっつかんで尋問部屋まで引きずり、その部屋に放り込んだ。

 カルアちゃんの部屋にいたメンバーは全員ついてきている。


 騎士団長さんはその者の耳を短剣を軽くつついた。



「まずはその長い耳を削ぎ落とそうか? 情報を吐くならば楽に殺してやる」

「……っ……ギャハ」



 だめだこりゃ、言うのに時間がかかるな…。

 そうだ、こう言う時にはいいものがある。


 俺はダークマターで、すこしアルコール臭のする、ほんのり濁った透明の液体を取り出し、騎士団長さんに渡した。



「アリム、これは?」

「ボクが今作った、超強力な自白剤です。数本服用すると精神がボロボロになり廃人となってしまいますが、その一本のみなら大きすぎる問題ありません。訊きたかったこと全て訊けます」

「うむ、わかった。お前の調薬は信用できるからな。使わせてもらおう」



 紫色の者はそれを聞き、口をグッと堅く結ぶが、俺は念術で直接、その者を操り、口を無理矢理こじ開け、その隙に騎士団長さんが自白剤を流し込む。



「う……ごぶっ……」

「さぁ言え、まず…お前は何者だ?」



 そして、次に放たれた言葉は衝撃的なものだったらしい。いや、俺はよくわかんなかったけど、国王様達にとっては衝撃的だったようだ。



「俺は……"悪魔"の……デバビア…………」

「なっ…!? 悪魔だと?」



 そんなにビックリされても俺はわからん。ルインさんにメッセージで聞いてみた。



【どして、悪魔だと驚くことがあるんですか?】

【悪魔はね、300年前にその時の勇者が滅ぼしたらしいんだ。人間と敵対する、人間と魔物の間にある、不思議な生き物でね……膨大な魔力をもっているって話】

【へぇ…そうなんですか】



 成る程、300年前に滅ぼしたはずの種族が生きて目の前に居るって事になったら、しりゃあみんな驚くよな。


 

「アリムよ、これは誠か? 此奴の虚偽ではないよな?」



 と、騎士団長さんが聞いてきた。



「そんなはずありません。だって俺が渡した自白剤、伝説級の代物ですよ? 仮にそいつがどんなに強い者だったとしても必ず真実を自白しますから」

「伝説の……!? そ、そうか。ならばこの者は本当に悪魔……よし、この調子でどんどんと情報を吐かせよう」



 こうして、その悪魔…デバビアに対しての自白剤による尋問が始まった。

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