第126話 疑惑
俺らは城の前へと着いた。
この時間、城内へ入るための城門は完全に閉ざされていて、普通は中に入ることはできない。
ゆえに、俺はメッセージで大臣さんを呼び出す。ミカにもメッセージを送るように頼んだ。
【大臣さん! 大臣さん! 起きてください、お願いします、緊急事態なんです、起きてください!】
【お願いします! た、大変なことが起こったみたいなんです! とにかく起きてください!】
2回ほど呼びかけたところで、大臣さんが応答した。
【ど、どうしたんんですかな? アリム殿、ミカ殿、そんなに慌てて】
【とにかく、カルアちゃんが大変な目に遭っているはずなんです! 話を…話を、どうか…できれば騎士団長さん達も呼んだほうがいい】
【ま、まて、とりあえず私がカルア姫様の様子をかくにんしよう。 なに、私もSSランカーぐらいの実力は持ってますからな】
そうなんだ。意外…なんて言ってる場合じゃない。
【と、とにかくお願いします】
念を押して頼み込みむ。
その2分後、大臣さんから返答が来た。
【いや、アリム殿、特に何もなかったようですが? カルア姫様はちゃんとぐっすり眠っておいででしたぞ】
そんなはずはない。仮にも、カルアちゃんに渡したアクセサリーは国宝級なのだ。
【そんははずはありません。ボク、実は前のメフィストのこともあり、カルアちゃんの身になにかあったらボクに知らせてくれるアクセサリーを、彼女に渡してるです。そのアクセサリーから連絡があったんです! ちなみに言うと、そのアクセサリー、国宝級です。誤作動なんてありえません】
【む……わかった、とりあえず一旦門を開けるから、アリム殿、ミカ殿、中に入って直接カルア姫様を見てみるとよいですぞ。何かわかるかもしれまかせんからな】
俺らはそのメッセージの後、門を開けてもらえ城内に入った。
すでにロビーには数人の騎士と、大臣さん、騎士団長さんが俺らを待っていた。
「姫様に何かあったとは誠か? アリム、ミカよ」
「そうなんです、何か、何か変わったことはありませんでしたか?」
「変わったこと……? そういえば珍しくカルア姫様が助けてくれと、私にメッセージを送ってきたな。結局、大きな虫だったが」
「ふむ、アリム殿、それではないですかな?」
くそ、すこし寝ぼけてるな。
大体、珍しくメッセージを送って来たとか言う時点で気付いてよ、何かあったって。
虫程度でカルアちゃんが騒ぐわけないじゃない。
「どう考えたって、それ……本当に『助けて』と言ったのでしょう。だいたい、大きな虫なんて、今日、ボクは一回も見てません」
「む? しかし姫様が自分で虫と…いや、この状況が状況か…? もしや本当に……? だ、大臣、急いでもう一度カルア姫様を確認しにいくぞ」
「わ、わかりましたぞ。アリム殿、ミカ殿も来て下され」
俺らはやっとこさ慌てだした騎士団長さんの後をついていき、カルアちゃんの部屋まで来た。
大臣さんがカルアちゃんの部屋のドアをそっと開ける。
俺はすぐさまカルアちゃんの元に駆け寄り、肩を軽く叩きつつ、声を掛けて起こした。
「カルアちゃん、カルアちゃん! 起きて、起きて!」
すると、カルアちゃんは目をぱっちりと開け、起きた…が、次に放ったのは、信じられない衝撃の言葉。
「どうしたんですか…? 忘れ物ですか? アリム"様"」
俺を"様"で呼んだこと。
それに、一同騒然となる。ここにいるメンバーは騎士たち含め全員、カルアちゃんが俺のことを『アリムちゃん』と呼んでいるのを知っているからね。
「な…なんと…!?」
「寝ぼけているのか…アリム"様"だと? いや、でもまさか…」
「どうされたのですか? 皆さん」
みんな慌てるのは仕方ない。この目の前にいるカルアちゃんは偽物かもしれない疑惑が今、起こっているだから。
だが、見た目だけならば完全にカルアちゃんだ。
ミカが俺に耳打ちをする。
「お、おかしいよ…カルアちゃん。ねぇ…アリム?」
「…うん。でもまだ寝ぼけてるだけかもしれない。その可能性も捨て切れたわけじゃない。ミカ、なにか真実を写す鏡みたいなの、この世界にないか調べて? ほら、ゲームではよくあるし、何かがカルアちゃんに変装してるのかも」
「わかった……」
ミカはトズマホでサクッと調べた。
ミカは、俺にトズマホの画面を提示する。
「うん、あったよ。『トルーの鏡』だって。1000年前の勇者が持ってたみたい。これで変装スキルを使っている者をかざすと、本当の姿が映るんだって。効果はもう一つあるみたいなんだけど……」
「いや、それで十分だよ。どうせ伝説級でしょ。ダークマターで作るよ。ミカ…もし、カルアちゃんが偽者だった時のために、いつでも押さえつけられるよう、念術の準備をして」
「うん。わかった」
俺はダークマターで『トルーの鏡』を作り出した。
突然現れた伝説の鏡に、ミカ以外のそこに居る皆が驚く。
「『トルーの鏡』!? なぜアリム殿が持っているのですかな?」
「それは伝記によれば1000年前、勇者が魔王を倒したと同時に消滅したはず……いや、そんなことより、それでカルア姫様を見てみるというのだな」
「はい。やっぱり、怪しいですから」
俺は『トルーの鏡』をカルアちゃんに向かってかざした。
その途端、鏡はまばゆい光を放つ____
しばらくして光が晴れ、カルアちゃんがいたはずの場所には、人型の薄紫の皮膚をした何者かが居た。
どう見ても、カルアちゃん本人でないことだけは確かだ。
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