第119話 多忙な日常-3-

 おはよう!

 

 昨日は忙しかったなー。まさかパラスナさんが訪れてきて、その上、ランクを上げに行った帰りにバッカスさんに呼び出されて一日中酒の話をするとは思わなかったよ。


 ミカをすこし、あちこち振り回しちゃったなー。悪いことした。

 ミカは昨日のが疲れたのか、珍しくぐっすり寝てる。寝顔も可愛いなあ。

 

 俺はとりえあえず何かメッセージが来てないか調べてみた。

 メディアル商人組会のアーキンさん、グレープさんから連絡が来てる。


 えっと…[商品についての話がある]だって。

 そういえば昨日、道行く人に『新しい娯楽ありがとう』的なこと言われたな……。

 アーキンさん達、俺のネームバリュー使っただろ、多分。


 俺は愛しのミカのために朝食を作り、書置きを残して部屋を出た。


 そろそろマイホームが欲しいなぁ…。家は自分で建てればいいんだし、いい土地がないかアーキンさん達に相談してみようかな。ついでに。


 メディアル商人組会に着いた俺は顔パスでの 門を通り中に入る。

 珍しく、グレープさんとアーキンさんの二人が迎い入れてくれた。本当に珍しい。

 さっそく、俺のアイデア商品の話をする。



「んー、それがね、すっごくバカ売れでねぇ…」

「製造も追いついてないのだよ」

「そんなことより、ボクの名前、もしかして使いました?」

 


 そのことについて彼らは申し訳なさそうにこう言った。



「んー、ちょっとね…広告の隅っこに小さく立案者として名前を載せただけなんだけど…」



 そう、見せてもらった瓦版の広告には、確かにかなり小さく俺の名前が載っていた。

 これだったら俺のネームバリューを使ったとは言えないだろう。


 アーキンさんがその話を続ける。



「それが、そのアリムちゃんの名前を大多数の人が見つけたみたいでね…。 それもあってか王都じゃほとんど持ってない人は居らん状態となってしまった。国王様直々に注文も来た。 さらに来週からはメフィラド王国だけじゃなく、全アナズム中に発売される予定だ」



 そっか、そっか、大人気なのか。

 大いに結構。



「んー。そうそう、それでね、今回呼び出したのはお金の引き渡しね~。それとこの前作ってくれた機械と同じものをさらに5台ずつ追加で作って欲しいんだよぉ~」



 と、目の前にドンと大金貨の山が積まれた。ざっと2000万ベル分はある。

 さらに、それとは別に1500万ベル相当の大金貨が隣に積まれている。これは機械代だろう。

 しょうがない、引き受けてやるか。



「わかりました。今から機械を作るので、少々お待ち下さい」

「え? そんなはやくできるのかね?」

「ええ、前よりだいぶSとCが上がったので 」


 

 そう言って、俺はその場でマジックルームを出し、そこにこもった。



___________

________

_____



 10分後、すべての機械を作り終え、マジックルームから出た。

 アイテムマスターの俺からしたら、もはやこの程度の機械、朝飯前なのだよ。


 それにしても、なぜかグレープさんとアーキンさんの他にエルフの女の人が居る。お客さんかな?

 彼女はマジックルームから出てきた俺を見てこう言った。



「初めまして。アリムちゃん」

「は、初めまして」


 

 エルフってみんな美人なのかな?

 そんなことより、グレープさんとアーキンさんが妙にかしこまってるんだけど…まさか…。

 いや、そのまさかだ。



「私はマネ。メディアナ商人組会の会長を務めているわ。アリムちゃんの話はこの二人と、あと瓦版でよく知ってるわ。いつもお世話になってるわね」



 ひゃー! 商人組会の会長さん、一番トップが来ちゃったよ!

 まさかエルフだったなんてね…。

 それにしても、なんでそんな人がココにいるんだろ?



「え…なんで、そんな人がココにって顔してるわね」

「え! …えぇ。なんでボクに?」

「これから数十億ベル動くかもしれない大取引の相手なのよ、あなたは。だから私が出てきたの」



 やべぇ、心読まれた?

 このひと、やっぱり只者じゃないぞ。

 それより、ジェンガやそんな大それた取引じゃなかったはずなんだけど。

 本当に数十億も動くのかな?



「そんなにボクの考えた商品はすごいんですか?」

「えぇ、そりゃあもう。私の目が確かならね。それにあなた、アイテムマスターっていうスキルもってるそうじゃないの。ダンジョンででてくる伝説級の武器以上の武器を作れるらしいんだけど?」



 アイテムマスターはともかく、伝説級の武器が作れることって一部の人しか知らないはずだろー?

 どこでそんな話を聞いたんだよー。



「そ、そうです。作れますが、その話をどこで?」

「あなた、≪武神≫と知りあいよね?」

「は…はい」

「彼が最近新しく手に入れたって武器、実は密かにうちの商人の一人が鑑定したのよ。 もちろん伝説級だったけどね。 ダンジョンから出てくる伝説級とは比べ物にならないような性能だったわ。 それで、私達はそれが人が作ったんじゃないかって思ったわけ。そして調べていったらビンゴ! うちのお得意様のアリムちゃんに辿り着いたってわけ」



 調べまでするか。いやー、流石はこの国一番の商人組会だなー。多分、これからいろんな事どしどし頼まれるなー。めんどい。



「だから、たまにあなたに依頼するかもしれないわ…お願いね?」

「は…はい。わかりました」

「私達も、あなたとの取引を最優先にするわ」

「は、はい」



 その返事を聞いた彼女は『じゃあね』と言ってこの館の奥に帰って行った。

 グレープさんが口を開く。



「んー、アリムちゃん……お騒がせしたが…あれがうちの会長だ。これからも、まぁ、よろしくね」

「は、はい。まぁよろしくされました」


 

 俺は二人に機械を全て渡した。そしてテーブルの上のお金を受け取る。


 そこで帰ろうと思ったが、土地を探しに来ていた事を思い出した。



「あ、アーキンさん」

「ん? なんだね?」

「ボク、そろそろ一軒家に住みたいんですよ。王都の中心近くでいい物件ありませんか?」

「なんだって? なるほど…それなら良いところがある。すこし待ってなさい」



 アーキンさんとグレープさんは、どこかに行って、数分後に戻ってきた。



「ここが良いと思う。ここもいいかな。あとここも」


 

 俺はいくつかの物件を紹介された。そこで目をつけたのがメフィラド城から徒歩5分、メディアナ商人組会本部から徒歩12分の物件。

 さらに、ほぼ王都の中心にあるため、どこの王都の出入り口からも出やすい。


 620万ベルするが、まぁ、いいだろう。



「すいません、ここ買います。即金で」

「ははっ、流石だね。わかった、ここだね。下見はしなくてもいいのかな?」

「大丈夫です。ボクのスキルなら、土地の装飾から改造まで、なんとでもなりますから」

「そうかい、こんなに簡単に取引していいものかどうかは謎なんだけど、ここの土地は君のものだ」


 

 これでマイホームが建てられるぞ。



「では、ボクはこれで。土地の場所ももうわかりましたから」

「あぁ、気をつけて帰りなさい」



 俺はメディアナ商人組会本部を出た。

 そこで、門の人に何故か声をかけられた。



「あ、アリムちゃん、この今朝の瓦版見てみなさい! アリムちゃんの事について書かれてるよ!」


 

 そう、見せてもらった瓦版には俺とミカの事がデカデカと載っていた。

 はずかしい。


 それに、SSランカーに上がったから、王様から洗礼受けなきゃいけないんだって。

 忘れてた。明日洗礼式をするって瓦版には書いてるけど、そんな連絡……



[やぁ、国王だ。SSランクおめでとう。さっそくだが明日、洗礼があるからな。ミカというアリムちゃんのパーティメンバーと一緒に城に来なさい。 カルアも待ってるぞ]


 

 今来たわ。唐突すぎるってば…。

 ていうか、王様から直々に連絡もらうとか、やっぱり俺ってすげーんじゃね?

 とにかく、洗礼については明日は用事ないから問題は無いんだよね。



[わかりました]



 とだけ返事をして、俺は宿に戻る。

 今日で宿ともおさらば。


 ウルトさんが受付にいたのでこう言った。



「ウルトさん、ボク、一軒家建てることに決めました」

「唐突だね…。まぁ、そうかい、おめでとう。それにSSランカーになったんだろ?」

「はい。あの…1ヶ月半もの間、ありがとうございました」

「いんや、良いって良いって。たまにギルマーズさんとかパラスナみたいに、ここに遊びにこいよな」

「はい」



 俺は部屋に戻り、ミカに引っ越す事を告げた。

 いや、事前にメッセージで伝えてはあるけどね。



「ミカ、引っ越しするよー」

「突然すぎるわ! もう少しなんとかなんなかったの?」

「うん、家なんて一日で建てれるし、良い場所だし」

「いや、良い場所だってのはメッセージで何回も聞いたってば! 準備ってもんがあるじゃないのよ!」

「え、マジックバックで吸い込めば良いじゃん」

「気持ちの問題よ!」



 こうして俺らは早々に宿をでて、新しく買った土地に向かった。

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