第118話 多忙な日常-2-

 私はアリムに、メフィラド城前の一番大きいギルドに連れてこられた。



「じゃあミカ。この間フォレストタートル劣化種を4体倒してAランクの魔核28個手に入れたよね? それ全部提出すればSランカーになれるからね」

「え、本当?」

「うん。ボクはパーティとしてSSランクの魔核を提出してパーティランクをSSにあげるからね」

「でも、なんでそんなこと?」

「その方が良い仕事が増える。それに、いろいろと行動しやすいからねー」

「なるほど」



 私達はギルドに入り、受付を目指す。周りの冒険者達が私達のことを噂しているのが聞こえる。

主に私の事だ。

 途中、何人かに声をかけられたから、返事すると皆んな満足げな表情をする。なんで?



【称号「魅了の美花」を入手しました】



 ちょ、私の名前入ってる……。

 説明によると、人をたくさん魅了した人物に贈られ、さらに魅力がアップするらしいけれど……あれ、アリムってこれより上のやつ持ってなかった? 


 受付でアリムはエルフのお姉さんと話をしている。

 そして取り出したのはSSの魔核二個。その瞬間この場が騒然となった。


 必至になにかを書いてる人もいる。あれは多分瓦版社の人だな。

 あー、私達、明日からさらに目立つのか……。


 アリムに促され、私はエルフのお姉さんにAランクの魔核28個とギルドカードを渡した。


 しばらくして、魔核とギルドカードが戻ってきた。

 [所属パーティー『ジ・アース』:SS

  ミカ・マガリギ ランクS]


と、かかれている。


 それを見てアリムは『用事が済んだから帰ろう』って言って私の手を引いた。

 これ、結構すごいことなのよね? こんなにあっけなくていいの?


 そう…周りの冒険者が騒がしい。

 アリムと私は帰ろうとしてるのに、めっちゃ人が寄ってくる。

 『おめでとう』とか『新たな伝説』とか口々に言われた。

 あと、『ジェンガ』とか『オセロ』とか、なんかよくわかんないことも言ってたわね。

 さっきの瓦版社っポイ人からインタビューも受けたし。


 結局、ギルドから出られたのは1時間後のことだった……。

 私はアリムに言った。



「あ……アリム……一体、私が居ない間になにを?」

「うーんとね、愛想振りまいてたらこうなった…かな」


 

 通りで中には『女神様』だの『相変わらず可愛い』だのの声が聞こえたわけだ。

 魅力の称号についても納得できる。

 ぶりっ子だわー、本当にぶりっ子だわー。

 地球に居た時も有夢、こんなにぶりっ子だったっけ?

 まぁ、猫かぶりではあったかな。


 そんな風に、いろいろと考えていたら突然アリムがこんなこと言い出した。



「あ、ごめん。メッセージで突然呼び出された…。バッカスって人のところなんだけど、一緒にいく?」



 バッカス……たしかこの国で8人いるSSランカーの中の一人……いや、アリムが今、SSランカーになったから9人ね。

 9人の中の一人。

 お酒を造っていて、彼のお酒は、アナズム界あちこちで超有名な高級ブランドのお酒なのだとか。

 そんな人とも知り合いだったのね、アリムは。

 面白そうだから一緒に行こうかな。



「うん、行く。どんな用事なの?」

「バッカスさんと、お酒に合うつまみの開発…それと新しい酒造機の製造をいつかする約束をしてたんだよ」



 まだ未成年なのに、大人とお酒の話をするとは…アリム恐るべし。

 これがアイテムマスターの性ってやつ?


 私は、バッカスさんに指定された場所に向かうアリムについていった。

 道中、多くの野次馬に揉みくちゃにされながら。


 そして、やっと着いた目的地にはワイングラスを持った青年が一人立っていた。

 彼が恐らくバッカスなのだろう。彼は私達を見るなり声をかけてきた。



「やぁ、アリムちゃん。久しぶりだね。そちらは今、巷で噂のミカちゃんだね? よろしく」

「は…初めまして、よろしくお願いします」

「バッカスさん、お久しぶりです。用件はやっぱりお酒のことですか?」


 少し噛んじゃった…。

 そんなことは御構い無しに、手に持っていたワイングラスの中身をバッカスさんはちびりと飲んだ。



「うん、そうだよ。新しい酒造の法を立案したからね、その機械を造って欲しいんだ。設計図はあるからね。 それと、少し酒に合う料理の研究も一緒にしてくれないかな? 全部の報酬は…まぁ、そのお酒の売り上げの何割かってことで、どう?」

「了解しました! 任せてください」



 アリムとバッカスさんは互いに話あっている。

アリムが作業している間、わたしはジュースの試飲をしていていいそうだ。

 やったね。



___________

________

_____



「今日はありがとう。アリムちゃん、ミカちゃん」



 そう言って彼は私達に大量のジュースをもたせてくれた。

 昼の11時くらいからおよそ8時間。そのうち7時間55分、ずっと料理の研究してた…。


 真・料理を持ってるからって、私も手伝わされたよ…。

 なかなか新鮮な体験ができたから良いけどね。

 

 8時間も作業してたのに、アリムは全く疲れた様子じゃない。

 きっとポーションで誤魔化してるんだ。

 いつか絶対、体調崩すって。


 バッカスさんの会社の従業員さん達なんて、私達をアイドルのように扱ってたわ。

 それに広告のモデルもアリムがすることになったみたい。

 魅力、恐るべし。


 そういえば街でも、通りすがりの誰かが『んん、可愛いは正義ですぞ』とかよくわかんないこと言ってたよ。


 そんな感じで人に揉まれた1日だったわ。


 アリムはこれに慣れてるみたい。ぶりっ子め。


 その日の夜はたくさんジュースを飲みました。

 トイレが近かったです。

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