六章 悪魔

第117話 多忙な日常-1-

 デートの翌日。

 私は今、アリムより1分早起きして、朝ごはんを作っているの。

 昨日の間にアリムに出しておいてもらった納豆によら、納豆ご飯の付け合わせのお味噌汁と浅漬けをね。


 私の未来の旦那……アリムが起きてきた。今はアリムも女の子だけどね。

 そうそう、なんでかは分からないけど、"有夢"と"アリム"の使い分けはそれ程苦もないのよね。


 

「うん、やっぱり納豆ご飯は美味しいねぇ……」

「そうよねぇ……」


 

 そんな感じでのほほんと過ごしてたんだけど、ご飯食べてから1時間後くらいかな?

 私達の部屋の戸をノックする音が聞こえた。


 アリムが出ようとしてたけど、私が戸に近かったから私がでた。


 戸を開けた先には、銀髪の美人さんが居た。彼女は言う。



「あ…あれ? アリムちゃん…じゃない! アリムちゃん居ますか?」

「ええ、居ますよ」



 私はアリムを呼んできた。どうやら知り合いのようだ。

 アリムは彼女を部屋にあがらせ、お茶を出した。



「ねぇ、アリムちゃん! 二週間ぶり! この娘が今、巷で噂のアリムちゃんのパーティメンバーね?」

「はいそうです。 …噂って?」

「いやぁもう今、王都じゃアリムちゃんの話題だらけよ! 噂通りこの娘もアリムちゃんと同じくらい可愛いわね」



 そうなのか、昨日のレストランの人の反応を見てたけど、やっぱり王都中で有名人なのね。

 自己紹介しておこう。



「初めまして、私はミカっていいます」

「そうそう、ミカちゃんだったわね。知ってるわ。私はパラスナ。皆んなからは≪森羅万象の大魔導士≫ってよばれてるの。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします……」



 え……SSSランカーじゃなの…。トズマホの本の中にも載ってたわ…。

 なんでそんな凄い人とアリムが?



「ところで、要件はなんですか? パラスナさん」



 アリムがパラスナさんに頬っぺたムニムニされながらそう聞いた。

 アリムはぶりっ子。これは直らないみたいね。別にいいんだけど。



「そうそう、杖よ、杖。前に作ってくれるっていってたじゃない」

「はい、確かに言いましたよ。すでにギルマーズさんには武器を数本作ってますし」

「そうでしょ? 彼ね『こんなにいい武器は使わないと勿体ねぇ』って言って、結構使ってるそうよ? 最初は観賞用にするだけ見たいだったけど」



 え、ギルマーズって≪武神≫の? 彼もSSSランカーの一人じゃない! アリム……恐るべし。


 向こうは私に構わず商談を続けてるようだ。



「それでね、いい素材が手に入ったからそれで杖を作って欲しいの。できる?」

「大丈夫です!」

「そう、頼もしいわ。完成したらウルトに渡しといてね。 今日は少し忙しくって、ここに居られるとしても、1時間程度だから」



 え、ウルトさん!? なんでウルトさんに渡しておくのが当たり前みたいになってるの?


 そんな私の思いをよそに二人は会話を続ける。



「10分もあれば伝説級一本できますよ!」

「え……それ本当? 流石はアイテムマスター…」

「はい、レベル上げしてSとCが上がったので」

「あ、一週間もいなかったのはレベル上げしてたから?」

「そうです」

「じゃあ、少しここに居させてね。これが素材が入ってる袋よ。中身はサンドストームドラゴンよ。余った素材は自由に使ってね」

「了解です」



 そう言ってアリムはパラスナさんから素材を受け取り、私に一言『じゃ、ちょっと仕事するね』と言い残し、マジックルームに入っていった。


 私とパラスナさんで二人きりになった。私は試しに話しかけてみる。



「あの…パラスナさん」

「なに? ミカちゃん」

「なんで、さっきウルトさんの名前が…?」

「え? アイツから聞いてないの? アイツの冒険者名、≪ラストマン≫って言うんだけど」


 

 ラストマン……本によれば3年前に奴隷制を撤廃したこの国の英雄…かつSSSランカー。

 そしてラハンドさん曰く、彼とガバイナさんもその奴隷制に参加したんだっけ?


 え、ここラストマンが経営してたの? 

 …っていうか、アリム、この国のSSSランカー全員と関わりがあるって……。




「そ、そうなんですか。驚きました。アリム、色んな人と関わりをもってたんですね」

「そうよ、なんせSSSランカー候補だからね」

「そうなんですか! やっぱり」



 だろうね。そんなことだろうと思ったわよ。いくらなんでも大物の知り合いが多すぎだもんね。


 

「そうだ!」



 ポン、と手を叩き彼女はこう言った。



「私は『マジックマスター』を持ってるからね。他人の魔力を計れるの。ねぇ、ミカちゃん。ミカちゃんがどれくらいの魔力があるかみてみてもいいかな? あのアリムちゃんの仲間がどのくら位の実力なのか、気になっちゃって」

「ええ、いいですよ」



 流石はSSSランカー。マスターのスキルも持ってるんだね。

 私も欲しいなぁ。



「じゃあ、ミカちゃんの一番威力が高い魔法の魔法陣を、足元に極小サイズで出してみて?」



 私は『太陽と月の弓帝咆』の魔法陣を足元に出した。

 その魔法陣をしばらく眺めたパラスナさんは目を見開いてこう言った。



「み……ミカちゃん、これほどの魔力量見たことないわ…。それにこの魔法も…恐らくSSランクのスキルよね? 違う?」

「ええ、そうですよ!」



 マスター系のスキル…うん。

 やっぱり私もほしい。ギルマーズとかいう人も、ウルトさんも持っているのだろうか……。


 そんな私の考えをよそに、パラスナさんは話を続ける。



「ミカちゃんも、SSSランカーになれる程の実力があるようね…。杖を作ってもらいに来ただけなのに……ふふっ、これからが楽しみね」


 

 ニコッとパラスナさんが笑った。

 うーん、美人だなぁ。

 パラスナさんがそう言った時、マジックルームからアリムが出てきたの。



「パラスナさん、お待たせしました」

「あら、ありがとう。えっーと、鑑定、鑑定っと」



 パラスナさんはメガネのような物を取り出してかけた。あれが鑑定ができるようになるメガネなんだよね?



「うん、本当にすごいわ! 10分で伝説級の杖ができた……いえ、単純なエンチャントだけをみたらダンジョンからでる伝説級の杖よりも性能が上ね……はい、これ。お代の1200万ベルよ」



 そう言って彼女は大金貨120枚を机の上に置いた。

 日本円にして1億2000万円だっけ? 

 そんなの作るアリムもすごいけど、なんの躊躇もなく払うパラスナさんもすごいわ。

 やっぱり、SSSランカーってお金持ちなのかな?


 杖を受け取ったパラスナさんは帰るみたい。



「じゃあね、アリムちゃん、ミカちゃん。ふふ、とてもいい杖を買えたわ……それに新しいSSSランカー候補も見つけた…今日はついてるわね」



 そう言って帰って行った。



「え? なんかあったの?」



 とアリムが聞くから、私は起こったことをそのまんま話した。

 


「じゃあ、今からSSSランカーは無理だけど、Sランカーに成りに行こうか」



 そう、アリムは突然言い出した。

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