第4話

 後ろから黒い闇が迫ってくる。僕は捕まらないように必死に走るけど、距離は遠ざかるどころかどんどん縮まってくる。

「ノエル、どうして逃げるの……ねえ、逃げないで」

 後ろから声がする。ルネの声だけど、あれはルネなんかじゃない。もっと別の悪いものだ。

 僕は振り向かずひたすら逃げ続ける。だけど、いくら走ってもゴールなんて無い。やがて追い付かれ、そして捕まってしまう。おそるおそる振り向くと、そこには。

「ねえノエル、大丈夫?」

 目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしたサラがいた。どうやらまた悪夢にうなされていたみたいだ。

「……なんでも無い、平気だよ」

 僕は平静を装ったけど、息が荒くなっているのが自分でも分かる。ルネを喪ってから、よくこの夢を見るようになった。どうしてかは自分でも分からない。こうやってサラにうなされているところを起こしてもらうのは何回目だろう。

「ごめん、また起こしちゃった」

 サラは黙って頭を振った。

「どんな夢にうなされていたの?」

「別に大した夢じゃないよ……」

 サラに話したく無い訳ではなかったけど、上手く説明できる気がしなかった。だって自分でもどうしてこんな夢を見るのかよく分からなかったから。ルネを喪った悲しみはまだ残っている。だけど、それは僕が見る怖い夢とは関係ないはずだ。

「まだ早いから、また寝よう」

 もう今日は寝られないだろうとは思ったけど、僕はそう言って布団に入った。勝手だとは思ったけど、サラに心配もかけたくなかった。

「……うん、そうだね」

 サラはそう言うと、布団に入った。

 ベッドで横になっても、やはり眠ることはできない。サラを起こさないようにゆっくりと何回か寝返りを打ったけど、サラの眠りの妨げになってしまっていたのか、少ししs手からサラが話しかけてきた。

「ねえ、ノエル」

「……ごめん、僕ベッドから出るよ」

「ううん、大丈夫だよ」

 サラはそう言うと、僕の背中に両手を回し、ぎゅっと抱き締めた。

「苦しくない?」

「……うん」

 僕は少し途惑いながら頷いた。そして目が合うと、サラは僕に笑いかけた。これはなんだろう。苦しくないって言ったけど、やっぱり苦しい。でも辛いわけではない。なんだか心臓が締め付けられるように苦しかった。さっきとは別の理由で今日はもう寝られそうに無かった。


 朝になると、穏やかな陽射しが部屋に入り込む。サラは朝が苦手みたいで、この時間になるといつも布団を頭から被り、陽射しから逃れようとする。そんなことしたって無駄なのに。どうせもうすぐサラのお母さんが起こしにやってくる。

「サラ、起きて。朝だよ!」

「……うん」

 起そうとしても、生返事は帰ってくるけどいっこうに起きようとはしない。廊下から足音が聞こえてくる。今日も無理だった。

「サラ!いつまで寝てるんだい!」

 扉をばんっと開く音と同時に、サラのお母さんが大声で入ってきた。サラはその声でびくっとなり、今までの目覚めの悪さが嘘のようにベッドから起き出す。

「ちんたらしてないでさっさと朝ごはん食べな!」

 そう言うと、開けた時と同様にばんっとドアを閉めて部屋を出て行った。サラは急いで服を着替え、髪を梳かす。

「だから起こしたのに」

「ごめんね、ノエル。後で水持ってくるから待ってて」

 不満を呟く僕に対して、サラは申し訳無さそうな顔をしながら部屋を出て行った。だけどどうせ懲りずに明日も同じことを繰り返すのだろう。そして、サラのお母さんも怒っているくせに毎日かかさず起こしにくる。僕にはよく理解できない日常の風景だ。

 サラのおうちは洋服の仕立て屋をしているみたいだ。朝食を食べ終わると、サラのお母さんは町へ行って修理が終わった洋服を渡し、そして新しい注文を取り付けて夕方頃に戻ってくる。サラはその間に家で掃除したり近くの川で洗濯したりする。

「ノエル、お水だよ」

 しばらくすると、サラがそう言いながら部屋に戻ってきた。

「ありがとう」

 僕はコップを受け取って一気に口に流し込んだ。体に水分が沁みわたる。

「本当にお水だけで大丈夫なの?」

「大丈夫だって言ってるじゃん!」

 いったい何回目の質問だろう。きっと心配してくれているんだろうけど、少しうんざりする。そして最近寂しくも感じる。食事なんて必要ない体だけど、もし食事ができらもっとサラと一緒にいられたかもしれない。

「ねえノエル、天気もいいし洗濯が終わったら、川を渡った少し先まで行ってみない?」

「うん!」 

 サラと一緒にいる時間は新鮮なことばかりだ。ルネと一緒にいた時は、ほとんどの時間を家の中で過ごしたけど、今はサラと外出する機会が増えた。だけど、たぶん理由はそれだけでは無い。サラはいつだって僕に、いろいろな事を気付かせてくれる。風に運ばれる緑の生命の匂い、川底が見えるくらい透き通った水、澄み切った空の青さ、些細なことばかりだけど、きっとサラが教えてくれなければ気付かなかった。

 家の掃除も、二人だとあっという間に終わった。サラが朝食の残り物をバスケットに詰めている間に、僕は洗濯物とせっけんを籠に入れる。

「人とすれ違う時は、絶対話したりしちゃだめだよ」

 サラはそう言うと、人差し指を僕の口にあてた。

「分かっているよ」

 そうは言いつつ少し高を括っていた。どうせ人となんてすれ違わない。この家は町から離れているし、近くにある家も数える程しかない。

 川に着くと、サラはいつもどおり洗濯を始めた。僕は、見よう見まねでサラと同じ動作を横で繰り返す。

「ノエル、せっけんはしっかり洗い落としてね」

「うん」

 僕は、言われるままに川の水面に衣服を浸してせっけんを洗い落とした。水面はとても穏やかで、あの嵐の日とは大違いだった。聞いたところ、サラは今日のように洗濯しているところで偶然、川で流されている僕を見つけたらしい。

 洗濯が終わり川辺で洗濯物を干したあと、サラは昼食を取るために平らな石の上でバスケットを開いた。水筒を取り出して、僕に紅茶を入れてくれる。紅茶のいい匂いと、温かい湯気が僕の顔に立ち昇った。水分補給だけだったら水で十分だけど、紅茶のほうが特別な感じがして嬉しかった。

 僕はサラの横に座って一息ついた。洗濯物は風に靡いてゆったりと揺れている。ぽかぽかした日差しのあたたかさがとても心地いい。

僕はずっと疑問に思っていた事を思い切ってサラに聞いてみた。

「ねえ、サラ」

「なに、ノエル?」

「えっと……その……」

 僕は思わず目を逸らした。なんて切り出せばいいか分からなかった。僕はこの時、サラの回答が怖かったんだと思う。  

「ノエル」

 しどろもどろになっている僕に、サラは呼びかけた。サラの目を見ると、にっこり笑っていた。そして僕を持ち上げると膝の上に乗せ、ぎゅっと抱き締め、優しい声で聞いた。

「ノエル、どうしたの?」

「ごめん、大した話じゃ無かったんだけど」

 そう、何も恐れる必要なんて無い。怯える自分が馬鹿らしく感じた。

「サラは僕のこと怖くないのかなって。普通の人形って、話したりしないみたいだし」

「そうね、確かにノエルって不思議ね」

 サラは思案するように少し視線を宙に彷徨わせた。

「あのね、ノエルは覚えて無いかもしれないけど……ノエルを川から掬い上げた時、とっても悲しそうな表情をしていたの。今にも泣き出してしまいそうな表情。それで最初に思ったのが、私が少しでもノエルの寂しさを癒したいっていう気持ちだった。私自身が寂しかったから、勝手にそう思ってしまったのかもしれないけど。いやな事思い出させちゃってたらごめんね」

「ううん、全然平気!」

 やっぱりサラは不思議だ。普通の人だったら、きっとそんなこと考え無い。珍しい人形だったら、見世物にしたり高値で売ったりするはずだ。どうしてか分からないけど、そんな確信がある。

「ありがとう、サラ!」

「私は何もしてないよ。ノエルを拾って家まで運んだだけ」

 サラは恥ずかしそうに笑いながら目を逸らす。なんでか分からないけど、僕はサラのそんな仕草のひとつひとつから目を離せなかった。

「そうだ、今日は川の向こうへ行くんだったわ」

 サラはそう言うと、残りのパンを口に頬張り、バスケットに水筒をしまった。

「ノエル、川の向こうにはきれいなお花畑があるの。いつもこのくらいの季節に咲いてるんだ。きっとノエルも気に入るわ」

「へーそうなんだ」 

 僕はサラの膝から降りて立ち上がった。

 川の向こう。そういえば前に住んでいた家では、川の向こうに墓地があった。ルネは今そこに眠っている。

おじいさんは元気にしているだろうか。もしかしたら、僕がいなくなって心配しているだろうか。だけどルネの思い出が詰まったあの家にはもう戻りたくない。僕は不安を振り払うように首を左右に振り、そしてサラの腕を握った。

「サラ、早く行こうよ!」

 そう言うとサラを引っ張って橋に向かう「ノエル、そんな急がないでも大丈夫だからもっとゆっくり行こうよ。ね?」

 僕はサラの言葉に従わず、ぐいぐいと引っ張った。

「……ノエル、腕が痛いよ……」

 サラの言葉にはっとなり僕は立ち止まった。手を離して後ろを振り向くと、握っていたサラの腕の部分が少し痣になっていた。そんなに強く握っていたなんて自分でも気付かなかった。

「……サラ、ごめん……」

 僕は消え入りそうな声で謝った。

「ううん、大丈夫。でもノエルって意外に力が強いんだね。驚いちゃった」

 僕自身もそんなこと知らなかった。サラを傷つけるつもりなんて全く無かった。でもそんなの言い訳だ。

「ノエル、こんなとこで止まらないで早く行こう!」

 そう言うと、今度はサラが僕の手を握って走り出した。サラは不思議だ。どうして僕にそんなに優しくできるんだろう。そして僕は、どうして同じようにサラに優しくできないんだろう。

 手を引かれるままに林を走り続けると、しばらくして視界が開け野原が現れた。そして、そこには辺り一面に小さくて白い花が咲いていた。

「うわあっ」

 僕は思わず喚声を上げていた。

「ねっノエル、きれいでしょ」

 サラは弾んだ声で僕に話しかけた。

「うん、すごいきれい!」

 僕の声も自然と弾んでいた。だって、こんなきれいな景色今まで見たこと無かったから。

 サラは僕の手を離すと、野原の上にゆっくり寝転んだ。そんなことしたらきっと服が汚れてしまうし、サラがお母さんに怒られてるのではないか。そんな気もしたけど、この場に相応しくない気がしてなんとなく言わなかった。

「へへ……」

 サラが僕に笑いかけた。

「どうしたの?」

「私ずっと思っていたんだ。大切な友達ができたら一緒にここに来たいなって。やっと願いが叶った」

 友達。本で読んだ事がある。確か一緒に遊んだり話したりする事ができる、お互いに心を許すことができる相手のことだ。僕とサラは友達なのか。今まで考えたこと無かった。嬉しいけどなんだか恥ずかしい。

「へへ……」

今度は僕が笑った。

「ねえ、匂いをかいでみて」

 サラが花を何本か摘んで、僕の顔に近付けた。鼻を近づけてかいでみると、なにか甘い香りがふわっと漂ってきた。初めての匂いだったけど、優しく懐かしい感じがした。

「いい匂いがする」

「そうでしょ。花の蜜の香り。なんでか分からないけど、悲しいことや辛いことがあっても、この匂いをかぐと気持ちが安らぐの。不思議でしょ」

「うん……」

 僕は曖昧に頷いた。サラは僕に境遇が似ている。どうしてかは分からないけど、サラにはお父さんがいない。僕にとってのルネと同じように、サラにはお母さんしかいないけど、そのお母さんとはあまり上手くはいってないようだ。サラは今まで、何回この場所に来て寂しさを一人で紛らわしたのだろう。

「ねえ、サラ!」

 僕はサラの袖を引っ張った。

「どうしたの?」

「僕はずっとサラの側にいるよ。だから……」

 つい口走ってしまったけど、何を伝えたいのか自分でも分からなかった。

「ありがとう、ノエル」

 そんな僕に、サラは微笑みを返した。僕の気持ちが伝わったのかどうかは分からないけど、これ以上言葉は必要ないような気がした。


 しばらく二人で寝転んでいたけど、そのうち強い風が吹き出し、花びらが宙を舞った。

「風が冷たくなってる。もうこんなに時間経っちゃったんだ。そろそろ帰ろうか、洗濯物も乾いたと思うし」

 サラはそう言って立ち上がった。僕はここから離れるのが名残惜しかった。

「サラ、また来ようね」

 サラを見つめてそう言うと、サラは笑って頷いた。そしてサラと手を繋いで家路へと向かった。

 家に帰ると、サラのおかあさんが先に戻っていた。

「サラ!あんたこんな遅くまで、なに油を売ってたんだい!」

 サラのお母さんは玄関の前で待ち受けており、ドアを開けるやすぐに怒鳴り声が家に響いた。サラは何か言い返そうとしていたが、口籠もって言葉にはならなかった。何をそんなに怒る必要があるのだろうか。僕は腹立たしくて、サラの代わりに言い返したくなったけど、言葉を発するわけにはいかなかった。

「まったく、あんたはまただんまりかい!もういいから、さっさと手を洗ってきな。これから夕飯の準備するから、ちんたらしてないで手伝いな!」

 サラは黙って頷き、洗面所へと向かった。

「サラ、どうして何も言い返さないの?サラは何も悪いことしてないのに!」

 僕は声を抑えながらも、語気を荒げて聞いた。

「ううん、私が悪いの。お母さんに心配かけちゃって。それに……」

 サラの次の言葉を待ったが、続きは無かった。

「ごめん、何でもない……お母さんの手伝いしてくるから、ノエルは部屋で待ってて」

 それだけ言うと、サラはキッチンへ向かった。

 部屋に戻っても、一人ではする事は無かった。さっきのやりとりを思い出すと、無性に腹がたってしまう。

 だけど怒りだけではない。そもそも、サラのお母さんのあの態度は理解できなかった。だって、サラの帰りが遅いのを心配して玄関で待っていたのだ。それなのに、どうしてあんな口調で怒るのだろう。「心配だった」そのひと言さえあれば、サラだって悲しまずにすむのに。


「サラ、どうしてサラのお母さんはあんなふうにきつく言うの?」

 僕は思い切って聞いてみた。この質問で、サラのパジャマのボタンを付ける手の動きが止まった。

 サラの気持ちは動揺していた。聞いてはいけなかったのかもしれないけど、どうしても知りたかった。もっとサラの事を理解したかった。

「仕方ないの。お母さんにとって私は邪魔だから。私さえいなければ、お母さんは自分のためにもっといろいろできたはずだし」

「何言ってるの?邪魔だなんて思っている訳無いよ!」

 サラは黙って頭を振った。

 邪魔だなんて思っていない。僕はそれを感じているけど、どういう風に伝えていいか分からず、もどかしかった。

「それにサラはお母さんのこと好きなんでしょ」

「うん、大好き……だってお母さんだもん。でも、だからこそお母さんにはあまり迷惑を掛けたくないの」

 サラは、止まっていた指をまた動かし、ボタンをつけながら呟いた。サラの言うことは、分かるけどよく分からない。だって、サラとお母さんがこのままでいいはずなんて無いから。でもサラの気持ちなら少し分かった。僕だって最初、サラに素直な気持ちで向き合うことができなかったから。

「……サラはこのままでいいの?」

 返事は無かった。僕はサラの表情を見ようとしてはっとした。

サラの肩は小刻みに震え、サラの瞳からは大粒の涙が溢れ出していた。悲しい時や、辛い時に流すもの。ルネが涙を流した時のことが思い出す。でも今回はルネの時とは違う。僕の言葉がサラを悲しませ、涙を流させてしまったのだ。

「サラ、ごめん……僕……」

「……ううん……ノエルは何も悪く無い……ノエルの言うとおりだもん」

 サラはパジャマの袖で涙を拭きながら言った。

「ねえ、ノエル」

 サラは僕に呼びかけた。僕は俯いていた顔をおそるおそる上げ、サラの顔を見た。サラの表情は、いつも通りに戻っていた。

「私ね、臆病だからお母さんと正面から向き合う事ができなかったんだ。だけど、このままじゃいけない事も分かっている……私はノエルが側にいてくれたら、今までより勇気を出せる気がするの。だから私のこと応援してくれない?」

 想像していなかった前向きな言葉がサラから出て、僕は言葉を返すことはできなかった。だけど、首を何度も縦に振って応援する気持ちを伝えた。

「ありがとう、ノエル」

 そう言うとサラは僕を抱き締めた。自分の体の全体が熱くなるような感じがした。嬉しいけどそれだけじゃない。締め付けられるような胸の苦しみもある。それなのに充たされている感じでいっぱいだ。

「ノエル、少し早いけどもう寝ようか。明日からはいっぱい頑張らないといけないし!」

 僕は頷き、サラのベッドの中にもぐった。サラは部屋の明かりを消す、ベッドに入る。

「ねえ、ノエル……」

 サラが声を掛けてきた。

「どうしたの?」 

「今日は大丈夫かな……やっぱり魘されそう?」

 いろいろなことがあってすっかり忘れていた。そういえば、最近ずっと悪い夢に魘されているんだ。

「……どうかな、分からないよ」

 忘れていたとは言いにくかったので、曖昧に返事した。

「あのね、ノエル。昔おとうさんから、よく眠れるためのおまじないを教えてもらった事があるんだ」

 サラの口から初めてお父さんの事が出た。聞きたい事はたくさんあったけど、聞かない事にした。もしかしたらまたサラを泣かせてしまうかもしれないから。

「どんなおまじない?」

「あのね、今日のできごとで、楽しかったことや嬉しかったことを、一つずつ数えながら思い出していくの。そうしたら、いい夢をみながらぐっすり寝られるんだって」

「へー、そうなんだ。それじゃあ、試してみるね」

「うん、試してみて!」

 僕は目を閉じて、今日のできごとを振り返った。

 そういえば、今日の朝もサラはちゃんと起きる事ができてなかったな。まったく仕方ないんだから。あのお花畑、白い花がとっても可愛くて綺麗だった。花の蜜は、とてもいい匂いがした。さっきはサラを泣かせてしまったのは失敗だったけど、でもサラが前向きな気持ちになってくれたのはよかった。

 目を瞑り、1日の出来事を振り返っていたら、隣からすやすやと寝息が聞こえてきた。サラはもう眠りに着いたみたいだ。相変わらず寝るのが早いな。サラの寝息が僕の額にかかって、少しくすぐったかった。

 おまじないの続き。今日は楽しかったこと、嬉しかったことがたくさんあった。だけど一番は、サラが今僕の隣にいること。本当はもうそれだけで十分すぎるくらい嬉しい。目を開けてサラを見ると、なんだか笑っているように見えた。どんな楽しい夢を見ているのだろう。僕はもう一度目を瞑った。

 その日僕は、いつの間にか眠りについていた。どんな夢を見たのか記憶も無いくらいぐっすりと寝てしまった。そして、目が覚めたときにはもう朝になっていた。


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