14
変死を倒してから数時間後、俺達はとある街の中にいた。変死と最初に戦った時のような一本道。ビルも建っているけれど、辺りは主に住宅が道に沿って敷き詰められているように並んでいる。
そんな道路の沿いに俺達は車を停めて次の戦いに向けての作戦会議をしていた。
「変死を倒したから大分楽になったんじゃないか? 強い死因はもうそんなにいないだろ?」
「うーん、まだ気は抜けないね。即死と出血多量死も残っているし、他の死因もおそらく一筋縄ではいかないよ」
「いや、そうだろうけれどさ。さすがに変死みたいに奇襲に対応できるような奴は滅多にいないだろ。次からは例の作戦が効くとは思うんだ」
「そうだね。だからわざわざ前と同じような道を選んだんだし」
「よし、じゃあ後は司者が来るのを待つだけか。準備も大体整っていることだしな」
俺は停めてあるバイクに手を置いてそう言った。
「バイクにはもう慣れたようだね」
「……あれだけのことがあればな。変死との戦いにはヘルメットにも助けてもらったし、俺の相棒だよ」
「そう言ってくれてよかった。他のも大丈夫だよね」
「何回確認させるんだ? ちゃんと持ってるよ。ヘッドセットは付けてるし、銃も弾もある。ガスマスクだって忘れてない。防弾チョッキも着てる」
「うん、大丈夫そうだね」
「ところで巳尺治。これだけの装備は一体どうやって用意したんだ? 他の司者は装備なんてつけていなかったぞ? 何処かにあるのか? 壁をぶち貫いたあの大砲だってそう見つかる物でもないだろ」
「ああ、それはね。ゲーム開始時に運営の方から貰ったものなんだ。補佐役って、特に能力を持ってないからその代わりに、って感じだね」
「へー、そうだったのか。でもそうでもしないとろくに戦えもしないし、そんなもんか」
「そうだよ。武器がないと私、敵の能力が飛び交う中肉弾戦をしないといけないからね。そんなのまさに無理ゲーだよ」
「そうだな。そりゃそうだ」
俺が納得したところで、巳尺治のポケットの中からブザー音のような音が響いた。
「おっと、どうやら司者が来たようだよ。センサーに引っかかった」
「けっこう早かったな」
「そうだね。じゃあ私はあそこのビルに上るから、鑑君は心の準備を。でも多分大丈夫だよ。向こうは相手が二人だと知らない。意表はちゃんとつけるはず」
「わかった」
巳尺治は指を指したビルに向かって走り出した。大きなリュックを背負い、さらに二つもケースを両手に持っていた。……俺も、頑張らないとな。
「……あれ?」
なんか、何かが妙に引っかかる。何か、何かが心のどこかに引っかかる。違和感。なんだろう。気持ち悪い。何か大切なことに気付けていないような――
「いや、今はそれどころじゃない。司者がもう来るんだ。気持ちを切り替えないと。深呼吸。すー、はー、すー……はー」
司者と戦うのにはまだ慣れていない。心臓の鼓動がお前にはまだ早いと告げてくる。でも、やらなくちゃならない。そう、俺は戦わないといけない。
「……」
もしも、今から来る司者が早見だったらどうしよう。そんなことを考えてしまった。西条先輩を殺した早見。それでも会った時に撃てなかった早見。次は殺すと宣言した早見。早見が来たら――殺せるのか。
「……まだ、そんなことを言っているのか。決めた筈だ。次は、ない。勝たなくちゃいけないから。巳尺治のためにも、自分のためにも」
でも正直、早見を殺すことはできそうにない。仇ではあるけれど、それと同じように命の恩人でもあるんだ。そんな人を、撃てるわけがない。
「なんだかなあ、何と言えばいんだろう。よくわからないけれど、感謝しているんだ。本当に、あんなことをされて、よくわからないんだけれど」
早見が何を考えているのかわからない。でも、わからないけれど、きっとそれは悪意じゃない。そんな気がする。
「鑑君、気を付けて、来たよ」
ヘッドセットから巳尺治の声が聞こえた。……来たか。相手が早見であっても戦うしかない。覚悟を、決めるんだ。
「……?」
何故だろう。目の前にもやがかかってきた。霧、というのだろうか。白っぽい煙が辺りを覆っていく。待て、煙?
「……っ!」
俺は慌ててガスマスクを装着した。相手は毒死か? それともただの目くらましか。まだわからないけれど今はとにかく付けるしかない。
「初めまして」
もやの向こうから声がした。人型のシルエットが浮かび上がっているけれど、どんな人物なのかは判別できない。だけど、相手が挨拶をしてくるということはおそらくかなり自信があるのだろう。
俺とは違って、正面衝突しても押し切れる自信が。
「自己紹介します。私の名前は平和菜緒。平和菜緒と申します。鑑境谷さん。本戦で戦うのは初めまして、ですわね」
「……っ!」
嫌な汗が頬を伝う。……何故だ? 確かに戦うのはこれが初めて。でも、おそらく会うのはこれが最初じゃない――
もやが少し晴れ、対面の人物が見えるようになる。派手な黒のゴスロリ。彼女はそのゴスロリのスカートを少しだけ持ち上げ、まるでどこかの貴族や淑女かのように慎ましい礼をしていた。
「っ⁉」
突如喉に焼けつくような痛みが走る。マスクをしているのに何で――っ。いや、これは実際にダメージを受けているんじゃない。体が、思い出している。焼けつくような激痛。痺れる肢体。そして、凍えて震えるかのような、恐怖。
「あ、が……」
「うふふ、思い出しましたか。体に流れる、恐怖の味を」
「くそっ!」
俺は腰に差していた銃に手をかけた。間違いない。こいつは毒死だ。近づかれたら終わり。近づかれる前に決着をつけないと――
俺はそう思って銃を抜いた。だが、
「あれ?」
銃が手からすっぽ抜けた。いや、ミスったんじゃない。銃を抜いて構える前に手からはたき落とされた――⁉
「遅い」
目の前に毒死がいた。既に拳を構えている。
「――っ!」
俺はすぐさま体を大きく後ろに反らした。
「……っ⁉」
わずか数ミリ。マスクすれすれで毒死の拳が空を切った。
「あら、少しは動けるようで」
毒死の拳の指の間には針が挟まっていた。おそらくあれで毒を体に入れて殺すのだろう。
「こんの……っ!」
俺は両手を地面につけ、足は地面を思い切り蹴り上げた。逆立ちの状態になるように。そしてそれは態勢を整えると同時の蹴りの攻撃。伊達に巳尺治に格闘術を教わっていない!
「うふふ、これはこれは。見ないうちに上手になりましたわね」
毒死は後ろに下がったのか蹴りは当たらなかった。だけれどそれでいい。おかげで態勢が元に戻せる。
蹴り上げた勢いで両足は宙を舞い、そして着地し、立つ。体操選手のイメージ。綺麗に無駄なく最短距離で起き上がる。今の俺ならイメージ通りにできる。
「あらあら。いつの間にこんなに。まったく、人というのはわからないものですわね」
毒死はそう言いながら距離を詰め、拳を放ってくる。今度は左に避けた。最初は予想より速すぎて対応できなかったけれど、一度見れば慣れる。まだ避けられないレベルの速さじゃない。
「ふっ!」
今度は右。体を揺らすように相手の狙いを外す。よし、これはいけるぞ!
「余裕をかますのはまだ早いですわ」
「⁉」
毒死の拳が目の前まで迫っていた。いつの間に⁉ 確かに毒死は速いけれど見失う速さじゃない。なら、何故――
「視界がっ!」
そうだ。もやがあって見えにくいうえに今はマスクをしていて視野が狭い。その所為でまだ感覚が掴み切れていないのか。
「っ⁉」
拳をかわそうとして咄嗟に避けるもバランスを崩してしまう。しまった。これじゃ逆効果だ。倒れてしまう。それでマウントを取られてしまったら終わりだ。
「くそっ!」
踏ん張ろうとしても既に手遅れだった。体勢は崩れ、落下するように尻もちをつく。
「今!」
そして尻もちをつく瞬間、毒死が拳を振り下ろしてきた。避けれない。そう、避けれない。この絶好のチャンスを見逃すはずが、ない。
耳元から銃声が響いた。
「⁉」
毒死の拳が俺に当たることはなかった。驚きの声が漏れる。何故なら、毒死は俺達の存在に気付いていない。そう。だから、毒死が勝ったと思い込んだその瞬間、巳尺治が毒死に一発ぶち込んでそれで終わりだった。それで、終わりの筈だった。
「……⁉」
驚きの声を漏らしたのは俺だった。毒死が、巳尺治の弾を、避けた。
「ふう、まさか。まさかお仲間がいるとは思いませんでしたわ。でもその可能性を知っていて助かりました。狭川さんとお話をしていて良かった点の一つですわね」
毒死は拳を振り下ろしたその瞬間、巳尺治が撃った弾丸に気付き、咄嗟に後ろに下がって弾を避けた。まるで知っていたかのような動き方だった。
「くっ……こんなのばっかりかよ!」
俺は立ち上がった。毒死自ら距離を取ってくれたんだ。体勢を立て直さないと。
「……面倒ですわね。もう一人は隠れているのかしら。私は見事に釣られたようですわね。まあ、それは織り込み済みですけれど」
「ばれてしまったとはいえ、二対一だ。有利なことに変わりはない」
「おや、自己暗示ですか。でも、鑑さん。貴方、聞こえませんでしたか? 織り込み済みだと」
「それでもだ」
俺はガスマスクを外した。
「……あら、それを外す勇気があるとは、思いませんでしたわ」
「お前はマスクをしていない。ならこのもやは毒じゃなくて、俺の視界を遮るためのもの。マスクをつけさせ、さらに視界をぼやけさせて肉弾戦がしやすいようにするためのトラップだ」
「ほう、少しは頭が回るようで。しかし、それだけでは、まだ――足りない」
毒死がこっちに向かって走り出した。巳尺治が撃って牽制するも意味がない。華麗に避けながら距離を詰めてくる。なんだコイツは。見た目は重そうな服を着て遅そうなのに動くと見失ってしまいそうになるほど速い。なんだこのギャップは。
と、そこで気付いた。毒死はゴスロリの服を着ているけれど、靴。靴はスポーツシューズだ。機動性をどこまでも追及した靴。毒死は靴だけは完全に機動性のみを優先している。
(気付けなかった……。ゴスロリに気を取られていて靴まで見ていなかった。だからイメージよりも速かったのか。それで、対応が遅れて……)
「よそ見をしている余裕はありませんわよ」
毒死がもう目の前まで来ていた。拳がもう構えられている。くそっ、何処に毒針が仕掛けられているかわからないから攻撃全部を避けるしかない。速いのにハードルが高すぎる!
「このっ!」
とりあえず腰からまた一つ銃を抜いて即座に撃った。毒死はそれを横にステップして避ける。巳尺治がそれを予想して移動地点に既に発砲しているけれど、それでも毒死には当たらなかった。身をくねらせてすんでのところを避けている。
(変死とはまた違った化け物だなあおい⁉)
と、そこでいきなり俺の体は固まってしまった。あれ? 何故だ? 体が急に硬直した。……いや、固まったんじゃない。わずかに震えている。痺れ⁉ まさかこれは――
「言った筈でしょう。まだ、足りないと」
(あのもやは視界を阻害するためのものだけではなく、きちんと相手にとどめを刺すための毒だった⁉ でも、それだと毒死は。まさか、じゃあ毒死はこの毒をずっと浴びて――)
毒死は既に拳を放っていた。まずい、避けられない!
「くっ!」
毒死は拳をひっこめた。拳があった位置を弾が通る。巳尺治が妨害してくれたみたいだ。
「よし!」
毒死が拳を引いた今がチャンス! 俺は銃を構えて発砲する。
「ちっ!」
毒死は後ろに下がりつつもそれを避ける。巳尺治の弾ですら当たらない。弾丸が雨のように降り注がれるというのに毒死はそれを踊るかのように避けていた。
「お前、毒が効かないのか? なんでこの毒の中でそこまで動けるんだ。耐性でもあるのか、それとも――」
「――ええ、体が痺れる程度なら誤差の範囲内ですわ」
「……マジかよ」
じゃあなんだ。ずっと体の痺れを感じながらあの速度で俺と戦っていたということか? 不意に足が止まるような毒なんだぞ? そんなの根性どうのこうので解決できるものじゃない。本当に化け物みたいな奴だ。
「でも正直時間はありませんの。いくら私でも許容量以上の毒を浴びると体が動かなくなってしまう。ですから、そろそろ終わりにしますわ」
毒死はそう言って走り出した。速い。まだあんなに走れるっていうのか。
「くっ」
俺は飛んでくる毒死の攻撃を避けることしかできなかった。痺れる身体を無理に動かしながら拳を避け、蹴りを避ける。裏拳も肘打ちも踵落としも膝蹴りも全て全て全て。アクロバティックに次々と繰り出される技一つ一つを避けた。避けることに集中しなければ一瞬でボコボコにされる。それだけ余裕がなかった。毒死は毒死で巳尺治からの狙撃を回避しつつ毒に蝕まれつつの攻撃で、神経も体力もかなりすり減っている筈だというのに、俺に一瞬の隙も与えなかった。
「はあ、はあ……」
「ふっ、ふう……」
お互い息が上がってきている。けれどそれでも終わらない激しい攻撃と必死の回避の攻防。
「ふっ、……鑑さん、貴方は一体何の為に戦っているのですか? はぁあ!」
「んぐっ、突然、なんだっ……はっ!」
「んっ、気になっただけですわ。貴方と共に戦う司者。一体何を条件に仲間にしたのか。それが気になっ、ただけです、わ!」
「うおっ⁉ 危ねえ……お前は、何を言って……いるんだ?」
「……へえ」
毒死が笑った。にやりとした悪意のある笑み。なんだ? こいつは何を言って……。
「……ふん、賢くなったかと思えば。とんだ愚か者でしたわね。まあ、いいですわ。では、質問を一つだけ。
――貴方、何と一緒に戦っていますの?」
その言葉を聞いた瞬間。またあの違和感がした。違和感。そうだ。何かがおかしい。大事なことに気付いていない。そんな感覚。でも、なんで――
「はぁああ!」
しまった! 少し考えた瞬間に体が固まってしまった! 毒死の蹴りが来る!
「があっ!」
「……」
蹴りは俺の横顔に激突した。意識を持っていかれそうになるほどの衝撃。……でも、死んではいない。
「……今、あえて避けませんでしたわね」
「ぐっ……はっ、上は趣味全開のゴスロリ。でも靴は機能性を優先したシューズ。ならそれだけ気を遣っているということだ。つまり、そんなところに毒は仕込まない。そう思ったんだけど、正解だった」
俺は毒死の足を掴んでいた。これで毒死は自由には動けない。毒死だって大量の毒を浴びている。しかもあれだけ動けば毒が回るスピードも早い。だから、毒死ももう限界に近いはずだ。
「大振りの蹴りが来るまで待っていた。ということですわね。見事。戦闘のセンスだけは認めますわ」
「でも、もう限界だ。これ以上は動けそうにない。だけれど、そっちだってそうだろ?」
「ええ、私ももう限界。背水の陣で行けば気持ちも引き締まって良いかと思ったのですが、思ったより貴方がしぶとくてこんな結果になってしまいましたわ。――こんな結果に」
毒死は口を窄めた。――あ
ひゅっ、と。
毒死の口から発射されたそれは俺の首筋に刺さった。
「あっ……」
「こんな面白くない結末、私は好きではありませんが、これも勝負。できれば殴り勝ちたいものでしたわ」
「そう……だ、な……」
全身の力が抜け、膝から崩れ落ちる。そろそろ俺は死ぬ。わかる。もう痛みも苦しみも感じない。あるのはただの脱力。体のスイッチがオフになったかのようにもう動く気配がない。このまま俺は死ぬのだろう。そう、このまま――
銃声が一発、聞こえた。
「……は?」
毒死の呆けた声も聞こえた。驚いただろう。だって、その銃声が示す結果、巳尺治が撃ったのは毒死の方ではなく、俺だったのだから。
「あっ、しまっ――」
「気付くのが遅かったな、毒死」
一回死に、そして瞬時に回復した俺は意識が戻った瞬間に銃を抜いて毒死の眉間を撃ち抜いた。
「……」
額に風穴が開いた毒死も崩れ落ちる。
俺は立ち上がった。
《毒死の司者、平和(たいらわ)菜緒(なお)。
標的により、即死――》
「結局、変死と同じ殺し方になった。俺達にしかできない防御。敵に殺される前に味方に殺されて敵の死因をキャンセルする裏技。ぶっちゃけ、忘れてたよ。最初からこうすればよかったんだ。気付くのに時間かかったけど、思い出せてよかった。――巳尺治、ごめん」
「大丈夫、勝てたからよかったんだよ。正直、私も鑑君が倒れるまでは忘れてたんだ。間に合って、本当によかった」
ヘッドセットから巳尺治の声が聞こえた。本当、巳尺治に頼ってばっかりだ。
「とりあえず、休憩しよう。装備も整え直さなきゃね。ところで鑑君、体はもう大丈夫?」
「毒は一度死ぬとリセットされるみたいだ。もやも晴れてきたし、これくらいなら大丈夫だろう」
「そう。よかった。今降りてそっちに向かってる最中だからもう少し待っててね」
「ああ」
これで毒死も倒した。まさかここまで苦戦するとは思っていなかったけれど、なんとか勝てた。これも巳尺治がいてくれたおかげ――あれ? そういえば、あの違和感はなんだろう。戦闘が始まる前と、毒死と戦っている最中のあの違和感。大切な何かに気付けていない感覚。なんなんだ。気持ち悪い。一体何に気付けていないんだ俺は――
「……」
「ふー、お待たせー! 毒死も中々手ごわかったね! でも勝てて良かったよ……鑑君?」
「……」
「鑑君? どうしたの?」
「いや……あのさ、巳尺治はもう死神ゲームのルールを全部俺に教えてくれたんだよな?」
「……そう、だと思うよ? 全部言ったはず。それが、どうかしたの?」
「いや、それならいいんだ。それなら……」
違和感。そういえばあの違和感を感じた時は確か――
⦅そうだね。じゃあ私はあそこのビルに上るから、鑑君は心の準備を。でも多分大丈夫だよ。向こうは相手が二人だと知らない。意表はちゃんとつけるはず⦆
⦅まさかお仲間がいるとは思いませんでしたわ。でもその可能性を知っていて助かりました⦆
⦅気になっただけですわ。貴方と共に戦う司者。一体何を条件に仲間にしたのか⦆
⦅……ふん、賢くなったかと思えば。とんだ愚か者でしたわね。まあ、いいですわ。では、質問を一つだけ。
――貴方、何と一緒に戦っていますの?⦆
「あ……」
わかった。これだ。違和感の正体。なんで司者が補佐役の存在を知らないのか。これだ。補佐役はルール上で標的の仲間だ。だから、死神ゲームのルールを知っている司者は補佐役の存在も知っているはず。でも、俺と巳尺治は知らないこと前提で作戦を考えていたし、実際司者達は知らなかった。この矛盾。わかったぞ。これが違和感の正体だったんだ――。
「あれ、そういえば毒死に言われたあのセリフ、どっかで同じことを訊かれたような……」
⦅じゃあ一つだけ。司者は合計十四人いる。その内の何人かはもう死んだけれど、鑑君は何と戦っているの?⦆
「早見だ……。あの時そういえば早見にそんなことを訊かれて……え? でも確かあの質問の意味は――あれ?」
「……」
「どういうことだ……? まだ違和感が消えない。何かがまだ引っかかる。なんで早見はあんな質問をしたんだ?」
「……」
「それに、なんで司者の人数なんか――あれ、十四……人。十四人? 司者ってそんなにいたっけ。確か司者は――」
感電死、凍死、毒死、即死、出血多量死、焼死、溺死、窒息死、圧死、爆死、ショック死、転落死、変死。
「……」
「……あれ、一人足りな――
突然、そこで俺の意識は途切れた。
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