シャンプー
霧島side
俺は、霧島洋。
今は、何かネタがないか探すためにブラブラと廊下を歩いている。
すると、女子が会話をしていた。
「最近、『サラリ』って言うシャンプーが流行っているんだって」
「ああ、あれか。私も使ってみた。すごく良かったよ」
「いい匂いだしね。普通の石鹸の匂いなのにきつくないし」
「でも、男子が使っていたら少し引くよね」
「ああー。わかる。女子力高すぎるというか」
すると、阿久津さんが少し反応した。
俺は、その様子を見て、思いついた。
「阿久津さん。もしかして、シャンプー変えました?」
「いや……変えていないぞ」
明らかに嘘をついている顔だ。
この様子だと、自分から言う気はないだろう。
「そうですか」
俺は、チッと舌打ちをした。
「おい!何が気に入らなかったんだ!」
「いや、ただつまらなくて」
「お前、俺を遊び道具だと思っているだろ!」
「ええ、そうですけど」
「サラッと嫌なことを言ったな」
阿久津さんは、呆れたような顔をする。
すると、リョウが来た。
「部長、シャンプー変えました……?」
「リョウ、お前まで言うのか」
「だって……今まで、柑橘系の匂いがしたのに、今は、石鹸の匂いですよ」
ナイスだ、リョウ。
「確かに、いつもと違うと思ったら……」
俺は、阿久津さんを見て、ニヤッとする。
これでもう、決まりだ。
「阿久津さん。やっぱりシャンプー変えましたね。そのシャンプー、今流行の『サラリ』ですよ」
俺は、笑いながら言う。
阿久津さんが女子力高いって……!
ものすごく笑える。
すると、阿久津さんは、携帯電話を取り出す。
「秀(しゅう)!昨日、新しいシャンプーに変えたって……」
「ああ、変えたよ。『サラリ』に」
「最悪だ……」
阿久津さんは、その場に崩れ落ちた。
「まだ、諦めるのは、早いと思う……」
リョウが言う。
仕方なく、俺も言う。
「そうですよ。ばれなければいいと思います」
「そうか……?」
阿久津さんに、少し希望が戻ったようだった。
そして、俺たち三人は、部室に向かった。
すると、東野さん、ユイラとレイラ、戸田の楽しそうな話声が聞こえた。
「蘭ちゃん、今日、なんかいい匂いだね」
「本当だ」
「すごく上品な匂いだね」
「シャンプー変えたからかな?」
「もしかして、それって『サラリ』?」
「うん、そんな感じの名前だったと思う」
阿久津さんが反応する。
おそらく
(まずい、ここまで広がっているとは……)
と思っているのだろう。
俺は、笑いをこらえた。
「流石に、まずいですね」
「笑うな!」
阿久津さんは、顔を赤くして言い返した。
しかし、俺には、その反応が余計に面白かった。
すると、和泉と榊原が来た。
「洋君、なんで笑っているの?」
「霧島君、少し気味が悪い……」
「いや、阿久津さんのシャンプーが……」
俺は、二人に今までの出来事をすべて話した。
和泉と榊原は、笑ってしまった。
「阿久津先輩、お兄さんがいたんですね」
「意外です」
「ああ……無駄に女子力が高い兄が……」
すると、女子組が部室から出てきた。
「ねえ、さっきからどうしてそこでコソコソしているの?」
「尾行?」
「うわー、変態」
戸田に、変態と言われる筋合いはない。
「それより、要さんからサラリの匂いがする!」
戸田が大きな声で言う。
すると、周りの女子が阿久津を見た。
「うそー」
「引くわー」
阿久津さんは、顔を真っ赤にして、泣きながら言う。
「最悪だ!」
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