眼鏡

戸田side



 私は、戸田真実。

 誰かとお話したくて、探している。

 すると、要さんと洋君がいた。


 「そういえば、洋。お前、いつの間に眼鏡をかけるようになったんだ?」


 要さんが考えるしぐさをしながら言う。


 「今年の五月からです」

 「目、悪くなったのか?」

 「いえ、これは伊達メガネです」

 「ふーん。似合っているぞ」

 「そうですか。阿久津に言われてもまったくうれしくないです」

 「今、呼び捨てだっただろ!しかも悪口!」

 「本当のことですから」

 「なんでそんなひねくれているんだ……?」


 要さんは、ため息をつきながら言う。


 「昔は、もっと素直だったのに……」

 「そんな記憶、一つもありません」

 「そんなきっぱり言うなよ」

 「阿久津さん、眼鏡かけてみますか?今なら、いろいろ持っていますよ」


 洋君は、通学バッグから、様々な眼鏡を取り出した。


 「なんでそんなにあるんだよ!」


 要さんは、突っ込んだ。

 洋君は、それを無視して言う。


 「これなんかどうですか?」


 それは、黒の太縁の眼鏡だ。

 要さんは、眼鏡をかける。


 「似合うか?」


 すると、洋君が携帯電話で写真を撮った。

 しかも、連写だった。


 「今、なんで写真を撮ったんだ!」

 「部員全員に見せようと思って」

 「そんなにおかしかったか?」

 「はい。もう、ただのオタクにしか見えませんでした」

 「やっぱり!なんか怪しいと思ったら……確信犯か!」

 「はい、騙されたほうが悪いです」

 「今、すごくイラッと来た」


 要さんの額に怒りマークがつく。

 すると、一君が歩いてきた。


 「お、一。いい所に来た。このサングラスをかけてくれないか?」


 要さんは、一君に、少し薄い色のサングラスを渡した。

 一君は、サングラスをかけた。


 「怖い!本物のヤクザにしか見えない!」

 「これで、性格が怖かったら完全にぴったりですね」

 「え……そんな……」


 一君は、困ったような顔をする。

 私も、そんなこと言われてもうれしくない。


 「真実ちゃん、そんな所でどうしたの?」


 和泉君が来た。


 「とりあえず、行ってみよう!」


 和泉君を引っ張って連れて行った。


 「また……今度は、なにをやっているんですか?」


 和泉君が呆れ顔で言う。


 「面白そう!かけてみていい?」


 私は、洋君の眼鏡にそっくりなものを選んだ。

 洋君が、何故か少し反応した。


 「戸田が頭よさそうに見える……」

 「本当に、もったいないくらい……」


 すると、洋君が私を見て驚いている和泉君に眼鏡をかける。

 和泉君以外の全員が笑った。


 「和泉……!いろんな意味で、似合っているぞ!」

 「和泉君、最高……!」


 和泉君は、眼鏡を外した。


 「これ、パーティー用のおもしろ眼鏡じゃないですか!」

 「「ナイス!」」


 私と要さんは、同時に言った。

 一君は、クスクス笑いながら


 「ごめん……!」


 と謝っている。

 そして、おもしろ眼鏡のかけあいになった。


 「この髭付きとか、阿久津さんに似合いそうですよ」

 「こっちの、白目のやつもいいんじゃないですか?」


 結局、ほとんど要さんにかけていた。

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