部活

風間side



暇だな……

僕は、風間リョウ。

今、とてもつまらないことをやっている。

何かって……?

それは……

『部活の潜入調査』だよ。

そんなの、普通やらないって?

まあ、この調査……というか、これはお遊びのような気がする。

調査は、頭にカメラをつけることが絶対条件。

そして、部活が始まると同時に部員に紛れ込む。

そのまま、部活を体験しながら撮影する。

たまに、ふざけたことや、いたずらをやる。

ちなみに、今回は剣道部。

なぜか、運動部は、ほとんど僕に任せてくる。

僕は、よく女の子みたいだと言われるのに……

何でだろう……


今から、潜入します。

拍手をどうぞ。

パチパチ……

暗すぎだって?

気にすることはないよ。

僕は、これが普通だから。

今は、部員の服装をして、一緒に部室に向かっています。

日常生活部の人は、意外と気づかれない。

なんでかわからないけど、すごいよね……

部活が始まりました。

カメラは、ちゃんと電源がついていて、録画モードになっている。

さあ、何をしよう……

じゃあ……まずは、簡単なことから。

バナナの皮を投げます。

どこで手に入れたのかは、秘密。

早速、誰かが転んだ。

あ……

不味い……

部長が転んだ。

あの人は、かなり大袈裟な人だと有名だから。

何を言うか全然わからない。


「おい、誰がこんな所にバナナの皮を捨てたんだ」

「えっと……わかりません……」


部員たちが戸惑う。

それもそのはずだ。

誰も思い当たらないから、混乱するだろう。

すると、部長が何か思いついたようだった。


「そうか……ひょっとして、誰かの陰謀じゃないか?」

「え?」


陰謀……

あながち間違っていない。


「そうだな……こんなのじゃないか?宇宙人が俺を密かに暗殺しようとしている、とか」


話が飛躍しすぎていて、ついていけない。

部員が困ったように聞く。


「なぜ……ですか?」


部長は、まったく気が付いていないようだ。


「俺は、人間と宇宙人のハーフだったんだ……禁断の子供……宇宙人は、俺を排除しないといけなかったんだ!」


うん……見事なまでの大袈裟っぷり。

ここまで妄想する人なんているのだろうか?

周りの人は、みんなひいていた。

次は、僕もいやかもしれないことをする。

飲み物に、大量のわさびを入れた。

実は、マネージャーには、この調査のことを伝えている。

っきも、笑いをこらえていたようだ。

マネージャーは、いつもの自然な動きで、スポーツドリンクの粉の代わりに、わさびを混ぜる。

ん……?

なぜか、一人だけ多い……

チューブ2本分は入れている。

あれは……

部長のボトルだ。

ほかにもやらかしたのかな?

絶対に恨まれていると思う。

部員が、ボトルの飲み物を飲む。


「辛っ!」

「なんだよこれ!わさびか!」


部員たちは、全員ものすごい叫びをあげながら悶えた。

部長は……

やっぱり。

気絶している。

部長は、辛い物が大の苦手らしい。

少し、やりすぎたようだった。


「マネージャーがやったのか?」

「いえ……私たちは、やっていません!」


嘘なのがバレバレだ。


「証拠はあるのか?」


部員が迫ってくる。

僕は、すかさずフォローした。


「あの……僕、見ました。矢川先輩が、さっきお手洗いに行った時、わさびを入れているのを……」


もちろん嘘だ。

というか、なんで僕が部員じゃないとわからないのかな?

矢川先輩は、部長のことを恨んでいたらしい。

よく、ほかの部員に愚痴を言っていた。

矢川先輩は、あきらかに焦っていた。

やってもいないのに、疑いをかけられるのは、とてもつらいだろうな……

そして、あまりにも目線が怖かったのか、矢川先輩は、泣きながら道場を出て行ったしまった。

またやりすぎてしまった……

最後に、こんなことをやってみた。

竹刀に、電流が流れる装置を入れてみた。

僕は、休憩するフリをして、退散している。

打ち合いになった。

一人が、相手に竹刀を当てた。

ビリッと電流が流れる。


「…………!」


当てられた人は、ショックで倒れた。

当てた人も、周りの人も、それを見て青ざめる。

そして、一人が竹刀の先を触ってみる。


「痛っ!これ、電流が流れるようになっているぞ!」

「今日は、本当に何なんだ!誰がこんなことやっているんだ!」


最後もやりすぎてしまった……

結局、全部すごい結果になった。

動画は……送信、と。

これで、今日の調査は終了。

何の意味があったかって?

うーん……特にないと思う。

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