#10「自殺大橋」

近所に『制裁大橋』という橋が存在するが全長千五百メートル、橋梁部千メートルの県内でも比較的大きい橋だ。交通量も多く、朝と夕方の通勤時、帰宅時には混雑するほどでごく、普通の一般的な橋ではあるが、ひとつの問題点があった。夜中になると橋に人気は無くなり、静寂な空間が創られ、その中でかすかに雑音が現れ、橋の頂点へと動いていった。人影は頂点に辿り着くと柵を乗り越えるとまるで机の上の消しゴムが無意識に当たった手によって床に落ちるように人影も同じ動きをした。翌日、TVのニューストップには『制裁大橋で投身自殺!』の一面が流れた。


これが『制裁大橋』のもう一つの正体。

別名『自殺大橋』。


この橋は年間二十四人、月二人のペースで自殺が起きている。県内ではこの橋が問題視されて対策として五メートルのフェンスが設けられた。この対策により、この橋においての自殺率は低下し、問題が解決したかに思えた。しかし、対策は表面上の解決策でしかなく、臭いものに蓋をしたに過ぎない。手段を断っただけで根本にある原因の解決にはなっていない。拳銃を失った殺人鬼は凶器を探し、殺人を犯す。自殺場所を失った自殺者は生きる屍として無職者という形で新たな問題を発生させ、年々、その数は増加していった。この世はうまくバランスがとれている。成功者がいれば必ず失敗者が存在する。自殺者が減った分、無職者が増加した。当然と言えば、当然の現象だ。原因を断つためには人を殺すことでしか解決はできない。自殺に至る原因は人間誰しもが抱いていて絶対的に解決の方法はないからだ。また、ニートについても自殺の原因を断ったわけではないからして自殺する方法、機会があれば自殺は起こる。どちらにしろ、人の死は避けられない。『制裁大橋』だけを問題視することは間違っている。今回の問題もこれから起こりうる問題も完璧な解決策などなく、見て見ぬふりをすることが最良の案といえるだろう。

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