第79話 海戦 04
◆
「海軍元帥のブラッドが戦場に出てくるっすよ」
山道の少し開けた場所。
そこに何人かが集まり、円を作っている。
通称、青空会議。
場所を転々としている彼らの作戦会議はいつもこのような形だった。初期メンバーに加え、途中から合流したメンバーも数人――他の反抗勢力のトップを張っていた人間がほとんどだが――も、その会議には参加している。
だが、その中心になっているのは、やはり初期メンバーだった。
その会議の口火として、ミューズがそう告げる。
「海軍との戦闘はこれまでもそこそこあったっすけど、今までのような一体二体ってレベルじゃなくて、総戦力って感じらしいっす」
「それは好機だな」
クロードが声を放つ。
「海は広すぎて全てのジャスティスを殲滅させるのにも骨が折れる。そっちから来てくれるには好都合だ」
「そうだな」
首を縦に動かすライトウ。
「だが海ではこちらの機動力がかなり落ちる。どうにか陸での戦闘へと持っていかないと」
「そうは上手くいかないでしょうね」
カズマが首を横に振る。
「あちらもこちらの欠点とあちらの利点を把握しているでしょう。故に、海上から遠距離での砲撃などをしてくるでしょう」
「だね。そういう情報も入ってきているっすよ」
「おいおい! この国はルード国の領土だろ? 私らがいる所だけピンポイントで狙えるわけないからどうすんだよ!?」
「ルード国の『領土』。それですよ」
カズマが眉間に皺を寄せる。
「つまりこの国を見捨てた、ってことです」
カズマの声に周囲の人間がざわめく。
「ジャアハン国民の命を犠牲にしてまで、僕達の命を狙っているのですよ、ルード国は」
「ちょうど島国で国土も狭いしな。それだけ俺達が重要視されたということだ」
クロードの言葉に皆の表情が険しくなる。
「なあ、なんとかその爆撃を止めさせられないか?」
「島国とはいえ中に逃げれば海からの攻撃は届かないだろう」
ライトウの問いにクロードは返答する。
「だが、その作戦をした所でルード軍は俺らの所為にして攻撃をするだろう。逃げは結局の負けだ」
「だったら!」
「だったら一つしかないだろう」
クロードは指し示す。
「迎撃だ。海辺に俺が姿を示して一般人に攻撃はさせない。そしてこちらから海上ジャスティスに攻撃を仕掛ける」
うおおおおおお、と雄叫びが聞こえる。
「そうこなくっちゃ! 流石クロード!」
「うん。俺もその方が良いと思っていた」
アレインとライトウも満足そうに頷く。
「待ってください」
そこにストップをかけたのはカズマだった。
「我々の軍勢には歩兵がほとんどです。海上戦闘には向いていないです。多くの人数がいようが利点はありません」
「だったら俺とクロードだけでいい」
ライトウが告げる。
「俺はある程度抜刀術が使える。それに海上のジャスティスの上に乗ったり破片に乗ったり、そういう行動も出来る」
「それなら私も」
「アレインは地上で走り回って攪乱するのが得意な仕事だ。海上は足場がないからお前の利点は無くなるだろう。それに素手でまだジャスティスは破壊できないのだから」
「むー……クロードの役に立ちたいのに……」
「陸は陸で仕事があるぞ。――なあ、ミューズ」
クロードがミューズに振ると、彼女は首を縦に振った。
「海での狙いと、この国のジャスティスの残りも同時に襲来する可能性があるっすね。陸軍の方っす」
「そっちの方がむしろ後ろから狙われて危ないから、先陣に立ってくれ、アレイン」
「了解だよ!」
嬉しそうに頷くアレイン。
「で、ミューズ。いつごろ上陸予定だ?」
「予想だとあと半日ってとこっす」
「そうか。じゃあ引き続き情報を集めてくれ」
「了解っす」
「本日は以上だ。各自準備をすること」
そう言ってクロードは会議を打ち切った。
ぞろぞろと各々が戦の準備に取り掛かるべく動く中、
「クロードさん」
「カズマか。なんだ?」
「あの……コズエ知りませんか?」
「コズエ?」
「会議にも出ていなかったのに気にしていなかったので、もしかするとクロードさんが何か知っているのかと……」
「知らないな。俺も逆に君達が知っているのかと思っていたが」
「それが朝から姿が見えなくて……」
「町に買い出しにでも行ったんじゃないのか?」
「そうだといいのですが、少し変なのがいつも一緒のぬいぐるみが部屋にあって……テレパシーでも反応しなくて……」
心配そうな声を落とした――その時だった。
「カズマ! クロード! これ見てっす!」
ミューズが声を上げてパソコンを持ってくる。
そこに映っていたのは――
『見ているか、魔王。お前の仲間はこちらの手にある』
海軍元帥のブラッド。
そして、その横で手を縄で拘束されている――コズエの姿だった。
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