第72話 会話 02


 コズエの兄――カズマ。


(そう。カズマが口にした、あることは嘘だ。もし俺が嘘を口にしたらどうかなるようにしかけていたら、お前の兄はお陀仏だぞ)

(そうですね……ですが、そこまでは読めませんでした)

(だよな。分かる方がおかしいってもんだ。で――そこに当たるのがどの言葉か判るか?)

(……はい)


 コズエの心の声は少し震えていた。

 その震え声のまま訊ねる。


(?)


(じゃあ先にこっちからだ)


 寝そべったままクロードは人差し指をくるくると廻す。


(テレパシー能力について、だ)

(……テレパシー能力はありますよ)


(そこを嘘だとは言っていない。嘘になった部分は――


『離れていてもお互い会話出来ます』


って所だ)


(……どうして分かるんですか?)

(俺には嘘が分かるって言っただろ? 嘘は俺の耳に変化して聞こえるんだよ。言葉で言い表せられないけどね)

(それで、どこの部分が嘘だったんですか?)


(――『お互い』)


 ピクリ、とコズエが一瞬全身を硬直させる。

 それは正解だと告げているようなものだ、とクロードは続ける。


(そこから推定した。『お互い』が嘘であれば、裏を返せば『片方しかない』ということになる。つまり、テレパシー能力は一方的なモノだと考えられる。相手の心を勝手に読み取り、自分の考えていることを勝手に押し付ける。双方向性のように見えて実は一方的なものだ。――言いたいことは分かるな)

(はい。その通りです)


 コズエは大きく息を吐く。


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