第68話 同志 10

    ◆




「はい。じゃあこれで決定で」


 クロードが告げると、他の五人はパチパチと手を叩く。

 あの後、クロードは五人と、三つのことについて協議、情報共有を行った。


 一つ目として、クロードは以後、五人のことを呼び捨てにすることになった。

 それはリーダーとして立つクロードに対し、五人が要求したことだった。敬語だと色々とおかしいという理由だ。

 特に却下する必要性もなかったので、クロードはそれを受け入れた。

 クロードも自分のことを呼び捨てにしていいと言った所、ライトウとアレイン、ミューズは了承したが、カズマとコズエは首を横に振った。二人はそういう性格のようだし、そこまでは強制する必要はないと、そのままにしておいた。


 二つ目は、五人に対し、クロードは自分の能力について伝えた。

 但し、それは「能力がある」としか告げず、詳細な情報は伝えなかった。

 それは二つの意図がある。

 一つは単純にクロードの能力に頼りきりにならないようにすること。

 もう一つは、裏切者が出た際の警戒である。


(まあ、言っても信じてもらえないだろうってのもあるけどな)


 クロードは内心で言い訳をする。

 五メートル以内のモノを何にでも変化させる、なんてことは普通では信じられないことだ。それはクロードが一番理解している。

 ならば能力を見せるが、詳細は説明しない方がいい。


 そして最後。

 三つ目として行ったのは、この集団に名称を付けることである。


 六人で話し合った結果、最終的に決定したのは、至ってシンプルなこの名だった。


正義の破壊者Justice Breaker


「やっぱりコズエのがいいっすよね。ハイスペックっす」


 ミューズが口にした通り、この名を決定したのはコズエである。

 彼女は可愛らしい胸を自慢げに逸らす。


「うまい名だと思うよ。ジャスティスという名の正義を冠したロボットを破壊する者としての意味と、こちらが正義だということが掛かっている」


 同じ名称を自分が適当に口にしていたことが恥ずかしくなってくる、とはクロードは言わなかった。


「じゃあ俺らはこれから『正義の破壊者Justice Breaker』と名乗ることとする。クロード。それでいいな?」

「いいってそれ、さっきクロードが言ったじゃない。何を繰り返しているのよ。今更またリーダー気取り?」

「そういうわけじゃないんだがアレイン、つい癖でな……すまん」


 アレインの呆れたような目にライトウは頭を下げる。

 そんな二人を尻目に、カズマはクロードに問う。


「で、これからどうするんですか、クロードさん?」

「とりあえずは、この国のジャスティスを破壊する。――ミューズ。情報は?」

「あるっすよ。だけどちょっち待ってもらっていいっすか?」

「どうした?」

「情報に正確さが少し足りないんで裏を取りたいっす。一日! 一日くださいっす!」

「了解した」

「そのためにネット環境が整っている箇所でやりたいっす! ホームに戻らせてくださいっす!」

「ホーム?」

「ああ、言ってなかったね。ごめん」


 ライトウが説明を開始する。


「山を下ったとある町の一軒家に、俺達はまとめて住んでいるんだ」

「廃屋を勝手に間借りしちゃっているんだけどね」


 アレインが舌を出す。その後ろでぴょんぴょんとミューズが跳ねる。


「廃屋でも電気水道ガスネット全てが通っているっす! きちんと料金は払っているっすよ!」

「でも、それも苦しくなっているんですよね……」


 カズマの言葉に皆が消沈する。


「ジャスティスに復讐を誓ってから、お金を稼ぐ方法もないし、住む所も転々としなくちゃいけなくなったので……」

「……」


 コズエが神妙そうな顔で頷く。


「ならば簡単な話だ」


 クロードは手を打つ。


「そのホームから必要なモノを全て持ってこい。三〇分後、ここに来い」

「……?」

「疑問を持つな。従え。――最初の命令だ」


 クロードの言葉に、皆は疑問符を浮かべながらも従うのだった。

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