第66話 同志 08
覚悟を見せてもらう。
クロードはそう言って岩陰に向かい姿を隠すと、数分後に小さな小瓶を五つ持って戻ってきた。
小瓶の中身は赤い液体であった。
「これは見た目は赤いが、中身は無味の液体だ。身体に何の害もない」
「ほ、本当か?」
「その問いに答えはしない」
クロードは五つの小瓶を足元に置く。
「覚悟と共に、次の四つを約束できるのならば、この液体を飲み干してくれ。
一つ、ジャスティスを破壊、または破壊するにあたって邪魔な存在のみを攻撃対象とすること。
二つ、敵への攻撃以外の犯罪は行わないこと。例えば強盗とかだ。
三つ、俺の言うことには従うこと。
四つ、時には非情になること。場合によってはここにいる仲間でさえ見捨てろ。
以上だ」
クロードは親指のみをたたんで告げる。
「これら四つを守れない様であれば、俺は君達のリーダーにならない」
「……一つだけいい?」
アレインが険しい顔で問う。
「四つ目。これだけが私は納得できない。どういう意味か説明してもらえないかな?」
「おい、アレイン!」
「いい。その質問が来ることは想定内だ」
クロードが手でライトウを制す。
「アレインさん。例え話で言えば、もしコズエさんが敵の手に捕まって、明らかに罠だと分かっている所の中心部に置かれていた場合、どうする?」
「どうするってそんなの当たり前じゃない」
大きな胸を張って、アレインは堂々と答える。
「そうならないようにしないだけでしょ? そんな状況に置かれるようなことに」
「はぁ?」
ミューズが呆れたような声を放つ。
「前から思っていたけど、アレインって本当に馬鹿じゃないの? 知識全部胸と筋力に振り分けられてんじゃないの?」
「うっさい貧乳。私と同い年なのにその幼児体型は何よ」
「何をーっ!」
「おい、お前ら! ふざける場面じゃないぞ!」
ライトウが大声で叱りつけた後、クロードに頭を下げる。
「すまん。二人とも毎回こんな感じで……」
「いや気にしていない。それよりも――感心した」
「感心……?」
呆けるライトウを横目に、クロードは拍手する。
「アレインさん。正解だよ」
「へ……?」
「『そういう状況にさせない』――これが君達が掲げるべき信念だ」
ポカン、と大口を開けて五人は意味が判らないという混乱した様子を見せる。
「これ以上、俺は告げない。これがアレインさんの問いへの答えだ」
「……」
一同が黙り込む。
そして最初に口を開いたのは、ライトウだった。
「……最初からそういう目に合わせなければ、四番目は守る必要はない、ということか?」
「……」
クロードは答えない。じっ、と五人を見つめるだけだ。
ライトウ達は戸惑いでお互いを見合わせるのみである。
どうしよう。
どうすればいい。
お互いに確認し合う。
判断をする決意が足りない。
――と。
そこで一人が動いた。
その一人は静かにクロードの足元の赤い雫の入った瓶を手にすると、蓋をあけ――
ゴクリ。
一気に飲み干した。
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