第52話 復讐 17
(イエス)
あっさりと。
迷いもなく。
クロードは、正解だと口にした。
(よくもここまで当てられるものだ。あれだけの情報で、こんな荒唐無稽なことを)
(信じられないけれど……やはり、本当のことなのね)
故に、彼女は恐れたのだ。
自分の考えていること、これ自体も――変化されているのではないかと。
(その心配はないぞ……とはいっても、信じないだろうけどな。まあ、眼に見えるものじゃなくてもできるってのは、やっぱりチートだよな)
そう言われて気が付く。
彼は電波を乗っ取った。それは文字通りに、電波自体を変化させたのだ。自分を映すように。そんなことができるのならば、『空気』を『足場』に変えることだってできるはずだ。
(そういうことさ)
至極当たり前のように、またもやアリエッタの思考に対して返答するクロード。
(さて、ネタバレもしたし、そろそろ終わりにしようかね)
突如、彼はそう告げる。
(――アリエッタ。お前にとって、二つ目の罰を与える時のようだ)
その声は冷たく頭に響いた。
(っていうか、覚えているか? 俺が言ったこと)
(……色々あり過ぎて分からないわね)
(殺すって言ったでしょう)
自然に。
軽く。
(忘れたんですか? 殺すって言ったこと)
(……いいえ)
(ならばよし。殺しましょう)
話をしましょう、というような自然なようで不自然な言葉、とは真逆。
不自然なことを、自然に伝えて来る。
(……私に自殺でもさせようということ?)
アリエッタは今、拳銃を所持している。それをこめかみに当てて引き金を絞れば、彼女の命はないであろう。
(何を悟り切った口調で言っているのさ)
呆れた様なクロードの言葉。
(では、この檀上から落とす? 結構高いわね、ここ。ああ、それとも空中に浮かんで、私を落とすのね? その方が確実でしょうね)
(しないよ。だってそんなの――つまらないじゃないか)
(……つまらない?)
判らない。
クロードの考えが、全く読めない。
(私を殺したらつまらない? ならばあなたは何を望むの?)
(だから、あんたを一瞬で殺すなんて、つまらないって言っているんだよ)
耳元で、彼は溜め息をつく。
(抱き合っているだけじゃインパクトないだろ? だからこれから、あんたに、屈辱的なことをしてもらう。もう死にたくなるくらいのな。で、当然として元帥のあんたがそういうことをしたら……多分、国家反逆罪にはなるのかな? とにかく、確実に審問されるだろうな。そこで拷問されようが凌辱されようが、俺には関係ないしな)
(……ッ!)
(でも、まあ、押し付けだけじゃないぞ。大佐さんを殺した罪は、俺が被ってやるよ)
(……え?)
(――その代わり)
ふん、と直接、クロードは鼻を鳴らす。
(それを含んだ全てを、お前に被ってもらうけれどな)
(まさか、魔王……私を殺すというのは――)
(イエス、だ)
ひどく冷たく、低く、クロードは次のように伝える。
(社会的に、そして――精神的に死ねよ)
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