第27話 別離 09
◆
学校までの道程は、昨日とは違って何も眼に入らなかった。
怯えていようが。
睨みつけていようが。
隠れようが。
避けられようが。
クロードはなりふり構わず、疾走していた。
しかし、その表情に必死さはない。
至って、涼しい顔。
汗一つ掻いていない。
そのままクロードは、学校の前まで辿り着く。
「……おいおい、何だこれは」
学校前の道路には、車が何台も駐車していた。しかもその車達は普通の車ではなく、特殊な機材をたくさん積みこんでいた。車上でビデオカメラを構えている人もいる。
つまりは、放送局。
「全国放送する気かよ」
しかも、一局だけではなく、この地域で放送されている全ての局が集結していた。どの局も、スクープを撮るのに必死なのだろう。これがスクープになるかどうかは知らないが。
「あ……来ました! あの魔女、ユーナ・アルベロアの息子、魔王の少年です!」
一人の若い男性記者が、クロードの姿に気が付いて声を張り上げる。
それが合図のように、声が弾ける。
「魔王です! 魔王がやってきました!」
「こちら現場のアライです。ただいま、魔王が来襲しました!」
「やはり、自分の学校から滅ぼそうとするという情報は正しかったようです!」
「……成程。そんな情報になっているのか。というか、それで通るのか」
呆れた、と深い溜め息をついて、クロードは一歩前進する。すると、辺りはざわめき、記者達は一斉に身体を引いて道を開ける。
「そんなに怖いのか。こんなただの餓鬼が」
誰もクロードに対して答えない。しかし、その代わりに、
「ま、魔王が静かな怒りを携えてこちらにやってまいりました!」
「まさに憤怒の表情で……」
「最早手をつけられない状態に……」
「私達を殺害するなどと……」
「いつそんなこと言ったんだよ」
怒りなど最初から覚えていないし、表情も変えていない。敢えて出ているとしたら、呆れだけ。これ以上は何を言っても弁明しても、ましてや人質を取られて呼び出されたと真実を告げても、彼らは一向に聞かないし、誰も信じないであろう。それに、既に彼らに構っている時間はない。
クロードは無視を決め込み、校内へと入って行く。
待ち受けていたのは、異様な光景だった。
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