第24話 別離 06

    ◆




 学校での出来事があった、その当日からの話。

 あの後、クロードはすぐに家へと帰った。

 途中、ちらほらと人の姿があったが、皆、クロードを見るたびに怯え、姿を隠し、正面にいた場合でもすぐ角で曲がったり、ひどい時は悲鳴をあげて走り戻って行くなんてこともあった。

 そんな仕打ちを受けながら家に着いたクロードは、そこで悲しみに明け暮れた。


 ――ということはせず、


「成程」


 自分の身に突然発言した能力について、きちんと把握しておこうと色々と試していた。

 把握するにあたって、今までのことを振り返る。


 まずは、ジャスティスの崩壊。

 次に、クラスメイトの洗脳。


 このことからクロードは最初、自分の能力を、相手に命令を実行させるものだと思っていた。この能力ならば漫画やアニメでもよくある設定であるし、実際、洗脳能力は魔王と呼ばれるものが保持しているのは至極自然だとも言える。

 しかし、クロードの能力は、洗脳だけでは説明できない。


 ジャスティスの崩壊。


 あれはパーツ自体が脆くなっていた。しかもそれは、明らかにクロードが願ったからである。

 クッキーのように脆くなれ。

 ジャスティスが人間のように意志を持っていて、クロードの命令を聞いてクッキーのようになった、もしくは搭乗者がクロードの命令を受けて、自爆スイッチならぬクッキースイッチを押した、なんてことがない限り、洗脳系だけで全てを説明するのは不可能である。

 だから色々と検討した。


 そして気が付いた。


 自分の能力は、洗脳系ではない。

 それを、さらに上回る――


「……チートだな、これ」


 思わず自分で認めてしまった。

 能力の範囲は、半径五メートル程度。それは教室での出来事で判明している。

 だが、この能力はそれに条件が付く。


 条件。


 普通は条件が付いたと言えば、能力が制限されると思うだろう。

 それがまさか、能力の幅が広がるなんて、誰が予想しただろうか。


「……というか、この展開事態、予想できる人なんていないだろうよ」


 自室でポツリとクロードは呟く。既に外は一度太陽が沈み、再び昇ろうとしていた。つまりほぼ一日中、彼は能力の検討を行っていた。


「結構、楽しかったな。集中できたし……ある程度の条件はありつつも、応用性あり過ぎだな、これ」


 改めて自分の能力の凄さを実感しながら、彼は欠伸をして布団に入る。


「ああ、やっぱり眠くなってきた。睡眠と食欲だけはどうしようもないのかな? それとも……まあ、いっか。寝よう」


 数秒後、彼は制服のまま、寝息を立て始めた。

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