外伝 剣豪が生まれた場所 -04

    ◆


 そこから、キングスレイは剣の腕を研鑽した。

 最高の剣士になるため。

 スティーブを最高の鍛冶師にするため。

 幾度も戦場に出ては、功績をあげていった。

 今までとは違い、目標ができた。

 負けられない理由も出来た。

 だから頑張った。

 今までは頑張る理由など何もなかったのだ。

 敵がいたから、自分はそこで対処するだけ。

 斬るだけ。

 戦うだけ。

 そんな彼には目標ができた。


 生きて帰る。

 負けないで帰る。


 最初、家族が出来たら弱くなると思っていた。

 だけど違った。

 守るべきものがあれば、もっと強くなれる。

 それを実感した。


 そして彼が功績をあげる度に戦場に出る機会も多くなり、自然とスティーブの家を離れる時間も多くなった。


 一週間。

 二週間。

 一か月。


 だけど帰ってくる度、二人は迎えてくれた。

 剣を壊して帰ってくる彼にスティーブは文句言いながらも「しゃーねーな」と最後は頭を掻きながら苦笑いをする。

 その妻は戦場では味わえない暖かい豪華な食事を用意してくれている。

 そんないつもの暖かい場所。

 ――心地よかった。

 だけど彼は知らなかった。

 

 そんな暖かさが、もう味わえなくなる日が来るなんて――

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