第398話 未来 04

 壁を破壊し、ひたすら突き進む。

 そんなクロードが次に人を見つけたのは、とある部屋だった。

 左右上下と妙に空間がある、普通の部屋にしては異様に広い場所だった。

 そこにいたのは、二人。


 片腕を無くして血を流しながら倒れている、ライトウ。

 剣を刺して中央に座して屍となっている、キングスレイ。


「……相討ち、か」


 クロードは敢えてそう口にする。

 正直な話、見た目だけではライトウの負けだ。

 だが、両者とも力尽きているのは見て判っていたから、負けのイメージを付けない為にもそう明確に言ったのだ。

 ――カメラが廻っていることもあって、『正義の破壊者』が少しでも負けているイメージを植え付けたくなかったのだ。


(……言い訳に使えるか)


 クロードはこの部屋に入った瞬間、とあることについて、まずいな、と感じていた。しかしながら先までの行動と矛盾してしまう為、それを解消する手段をずっと探していた。

 それが見つかった。


「……なあ、ウォルブス。カメラはまだ廻しているか?」

「え? あ、ああ。渡されてからずっと、スイッチとか弄っていないぞ」

「そうか……なら、少し視聴者に配慮しないとな」


 クロードはそう言って、ライトウの近くまで行くと、その失われた腕の部分に自身の黒衣のマントを被せる。


「無くした腕とか流れている血とか、あまり見たくないモノだろう?」


 そう言いながら、そっとマントの上から腕のあった部分を撫でる。

 するとマントが見る見るうちに収束し、失った腕を縛り付けるように巻き付いた。


「腕の代わりなんて作れやしないが、縛って止血なら出来る。黒いから血の跡も目立たないだろう」

「でも……止血した所で……」

「そうだな。だからただの気休め……というよりも、ただ絵的によくしただけだ」


 それに――と、クロードはライトウの元を離れ、今度は中央にいるキングスレイの元へと向かう。


「ここはかなり絵的にもまずいから、絶対にカメラをこちらに向けるなよ。俺は映像を見ている人達にトラウマを植え付けるつもりはない。いいな?」

「……? あ、ああ……」


 ウォルブスのその返事を聞いた直後――


「悪いな。俺は、綺麗には出来ないんだよ」



 ――グチャリ。

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