第392話 希望 21
「――いいでしょう」
一つ頷き、コンテニューはコクピットの中に入って行く。
姿を見せるのはもうこれでいい。
クロードは完全に覚えたはずだ。
――コンテニューの容姿を。
「こちらこそ、貴方の『正義』を破壊することになりますから覚悟してくださいね」
これから破壊するのは、クロードの、『正義の破壊者』のリーダーとしての『正義』。
そしてその凝り固まって自身に満ち溢れた――『正義』だ。
個人としての幸せを見ていないクロードに、知らしめる戦いだ。
「……」
ふと、脳裏をよぎる。
もし、ここでクロードが自分に倒されれば――
「……」
コンテニューは無言でジャスティスの操縦桿を握り、前進する。
「……」
『……』
あまりにも慎重すぎる戦いであった。
あちらも考えは同様なのか、動きを見せない。
数秒の睨み合いが続く。
先に一歩踏み出したのはクロードだった。
ゆっくりと一歩ずつ、ジャスティスとの距離を詰めていく。
その動きを見て、コンテニューは銃弾を放つ。
しかしながら当然、その弾丸はクロードの身体を貫かない。
五メートル程手前で弾かれて他方へ飛んでいく。
「前と同じく、見えない盾、ですか」
芸が無い――とは言わないが、相変わらずずるいな、とは思う。
自分なのに。
『言っておくが、地雷とか無意味だぞ』
「――地面を不動の盾に変化させたのですか」
『正解だ。察しがいいな』
それはそうだ。
知っているから。
「どちらにしろ地雷なんか観光地に仕掛けてある訳ないですけど――ね」
と、そこでコンテニューは真上に向かって一発放つ。
しかしながらクロードは反応を示していなかった。
足元が駄目ならば次は上に向くように――と、コンテニューが読み取ったと思ったのだろう。
(……ならば、これだ)
コンテニューはジャスティスのとあるスイッチを押す。
直後。
真っ白い煙に辺りが包まれていた。
そのまま、クロードのいる位置に銃弾を撃ち込む。
カン、カン、と音が鳴る。
どうやら当たっていないようだ。
そのままコンテニューはクロードを中心にぐるぐると回転して――しかも五メートルを超えない範囲はきっちりと守って――攻撃をしていた。しかも位置を特定しにくいように一定速度ではなく変化させ、クロードが少し動く度に修正をしていた。
因みにその姿が見えているような行動の理由は明白だ。
実際に見えていたのだ。
密かに異能を用いてその視界を見えるようにしていたのだった。
そんな中、クロードが唐突に、凄まじいスピードで前方へと飛び出した。
――が、直後。
『がはっ!』
クロードが血を吐いて倒れた。
その理由は知っている。
前方に乗り出した、その瞬間、彼は盾を解除した。
そこに銃弾が当たったのだ。
――先程、上部に撃ち出した銃弾が。
『ぐっ……まさか……これを狙って……』
そうだ。
狙ってやった。
ここでクロードが停止すれば、彼女と遭わない。
だから未来を変えた。
彼女と遭って、思ってしまったのだ。
このまま彼女がまた痛い目に遭うのは嫌だ、と。
だから思いつきでやってみた。
ここでクロードが倒れても、その代理がいればいい。
そうすれば彼女を傷つけない未来が導き出せるのでは――と。
だが――
「……やはりそうか」
結果は無情だった。
過去に戻されてしまった。
しかも、
『今度こそ勝ってやるよ』
クロードが自分の口の端を上げている。
――こんな所まで戻された。
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