第355話 真実 16

「以前に貴方と会った最後の時――ちょうど黒い箱について開発していた時ね。

 ちょうどあの時、とある一つのことが決定したという噂が流れた。

 ユーナ。貴方を処分するという話がね。

 だからあたしは貴方に逃げるように促したの。

 未来へと、ね。

 結果、貴方はその日から姿を消した。

 あたしが促した様に未来に行ったのかな、と思っていたの。

 だけど数日経って、大人達はこう言ったの。

『ユーナを始末した』って。

 あたしは絶望したわ。

 ユーナを逃がすことが出来なかった、って。

 もっと堂々と、はっきりと逃げてって言えばよかった、って。

 そこからはもう、復讐しか考えていなかった。

 完全に、あたしが生死を決めた。

 勝手に決めた。

 分別の付かない子供や、関係ないと判断した人達は、魔力を無くさせて外の世界に放り出しただけで済ませたけど、でもそれ以外の大半は許せなかった。


 ……ねえ知っている?

 あたし達が大人達から疎まれた理由。

 あたしは、『開発』という異能だったから、一般人に武装兵器を与えることが懸念されていた。

 だから私は自衛の為に、人と関わるのを避けた。

 そうすれば一般人と関わらないだろう、と思われるだろうから。

 だけど……貴方は違った。

 貴方の異能は、考え方次第で他の人が唯一持っている異能を超える存在となる。

 あたしみたいに自衛する手段はない。

 貴方自身の異能を疎む人物の存在がいる限り、貴方は幸せに暮らせない。

 怖かったのよ。

 あの大人達は、貴方のことを怖がった。

 いつか自分達に刃向うんじゃないか、って。

 だから貴方を殺そうとした。

 その怖がり方は異常だったわ。

 それを異常とも思っていない、他の人達が異常で。

 あたしはそれがとてつもなく怖かった!

 怖かった!

 怖くて……でもその怖いという感情はあたし一人しか感じていないのが……とっても怖くって……っ!


 ……そう。

 だからあたしはみんなを殺したの。

 自分が怖かったから。

 平気で異物を排除しようとする、魔女という存在が。

 自分達が異物なのに、そういう考え持つ、魔女という存在が。


 完全なる魔女の消滅。

 それがあたしが望んだこと。

 そして実行に移した。



 ――これが真実よ」

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