第350話 真実 11

 ……この当時、本当に困惑したわ。

 未来に飛んだと言っても、せいぜい数年先のの未来だと思っていたから、まさか自分の知らない年号で何百年も先の時まで飛んでいくとは思っても見なかった。もしかしたらどこかの国限定で使われている年号なのかもしれない――とは今、客観的な視点ならばそう考えられるけれど、でもその時には微塵も思ってはいなかった。まあ、結局は何百年も先だったのは事実だったのだけれど。

 その事実に驚いた私は、これまた無意識に再び裂け目を作っていた。

 先と同じモノ。

 その先は元の時代、元の場所。

 ……怖くなったのよ。


 今の自分がいる場所がどこなのか。

 年代も。

 場所も。

 何も分からなくて。

 まるで独り、世界に取り残されたかのような錯覚に陥ったわ。


 だから元の場所に戻りたくなった。

 それだけしか頭に無かった。

 だからどうやるかとか、細かいことは何も考えていなかった。


「っ!」


 後機考えずに飛び込んだ。


 ――しかし。



「え……?」



 その先で、私は絶句した。


 私は自分の部屋から未来へ飛んだ。

 戻った先はいつもの光景であるはずだ。


 けれど私の目の前にあるのはいつもの部屋どころか――


 燃え尽き、破壊され。


 窓もない。

 屋根もない。

 玄関もない。



 あるのは――姿だった。

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