第344話 真実 05
◆
コンテニューはここからルード軍に従事することになり、様々なことを行った。
ジャスティスのパイロットとしてのテストランだったり、ジェラスに師事を仰いで身体を鍛えたりした。もっとも、見た目は幼いながらも中身は既に一七歳であったので、基礎教育は流石に受けなかったが。
しかしながら、彼には多くの時間があった。
だから考える時間もあった。
彼は考えた。
何の為に自分は過去に戻ったのか。
それを再認識した。
再認識して、再構築した。
この先の未来への道筋を。
思慮、考慮、憂慮。
色々に慮って。
そして、その上で彼は改めて覚悟した。
自身が幸せになること。
他人を犠牲にして幸せになること。
それには彼の協力が必要で。
そして――彼の犠牲が必要だ。
「……違う」
彼は呟く。
思うだけではなく口に出してしまう。
それは葛藤だ。
考えれば考える程、ある問題点に直面する。
その問題点の解決策は、あるにはある。
だけど、どうしてもコンテニューはその策を取りたくなかった。
何かその他の方法はないか――と模索する。
探しても、答えはまだ見つからない。
ピースがあと一つ当て嵌まらない。
そんな違和をひたすらに抱えていた。
――足らない。
時間が足らない。
あれだけあったのに、時間が足らないように感じている。
わざと時を逆戻りしてでも思考したが、それでも答えは見つからない。
しかしながら――分かっていた。
コンテニューには分かっていた。
この違和を埋めるピース。
コンテニューの策を決定づけるピース。
それを持つのは――彼女だ、と。
彼女に会わなくてはいけない。
それが最終的な答えを見つけるための、彼が出した結論であった。
だけど、ただ会いに行くなんてことは出来なかった。
特殊な経緯でルード国軍に入った彼には、スパイ疑惑や復讐の協力者を求めないように、はたまた優れたジャスティスパイロットを逃さないようにと、自由な時間の制限だったり様々な監視の目が光っており、 少し抜けだしただけで大騒ぎとなる程に、この一年は少しの遠出することもままならない状態であった。そんな中で他国へ行くなんてもってのほかだった。
だから彼は待った。
必ず、あるタイミングでかの国に――彼女のいる場所へと近づける。
それを知っていたから。
思考と思想と謀略と諦観と実験と実戦と油断と熟慮と策謀。
それらを繰り返しながら、やがて時間は少しずつ進んでいき――
革命歴 一七三年。
コンテニューが過去に戻ってから、おおよそ一年後。
ルード国はとある国への侵攻を閣議決定した。
その国は最大の敵対国、ウルジスの庇護下にある国。
緑が豊かで食糧自給率も高く、また地下資源も豊富である国。
二足型歩行ロボット ジャスティス。
その圧倒的な兵力を投入することも決まった。
その侵攻に携わる名の中には当然、コンテニューの名も入っていた。
彼がエースパイロットであるのは、揺るがない事実であったからだ。
故に、コンテニューの計画通りであった。
彼は機会を手に入れたのだ。
目的地へと足を踏み入れる機会を。
侵攻する国の名は――アドアニア。
魔女がいると謂われている国。
そう。
彼の目的は、その魔女に――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます