第333話 クロード 02

「……………………は?」


 呆けた声を放ってしまった。

 先から好き放題喋らせており、時折理解出来ないことも口にしているなと思いつつも自分の中で思う所があったのだが、最後の言葉だけは疑問を口に出してしまう程に本当に理解不能であった。

 自分が本当に望んでいることを決めつけられたのはどうでもいい。現に望んでいるのはそれであると納得してしまったから。

 その望みを自分が行うというのもどうでもいい。この戦いに勝つという意思表示であるのだから。しかしながら最初にこの場で対峙した時に「勝つつもりはない」と口にしていたことと矛盾しているが、それはブラフであったとも言えよう。あれだけ必死に声高に告げていたのだから、策の一つや二つあるのだろう。それもまあいい。

 しかし――最後の言葉だ。


『だから――! !』


 どうしてコンテニューを信じる必要があるのだろうか?

 更には、クロードの望みを全て叶えることが出来ている、というのはどういう意味だろうか?

 後者は文脈を無視すれば、クロードの望んでいる事象を自分が実行する、その力がある、という意味合いにも取れるのでまだ理解はできるが、前者は完全にクロードの理解の範疇を超えていた。

 コンテニューの何を信じる必要があるのだろうか?

 まさかコンテニュー側が勝つこと?

 それは即ち、クロードの負けを意味している。

 ならば負けろ、ということなのだろうか?

 負ければ自分がクロードの分まで幸せを謳歌する、という意味合いだろうか?

 ――そうとしか考えられない。

 間違っているかもしれないが、それ以上は考えても仕方がないだろう。

 それがコンテニューという相手だ。


「……覚えてやるさ」


 クロードはそう言ってやる。

 ここまで翻弄してきた、相手国の幹部。

 クロードの因縁の相手。

 無視するにはあまりにも大きな存在。

 相手の言われた通りに認識してやる。


 その眼を。

 その顔の造形を。

 その口を。

 その鼻を。

 その耳を。

 その髪色を。

 その長さを。

 その肌の色を。

 その身長を。

 その手の形を。

 その足の長さを。

 その腰の位置を。


 全てを焼き付けて、そして言い放ってやる。


「覚えた上で、その全てを破壊してやる」


 コンテニュー。

 陸軍元帥。

 相手はルード国を背負って、ここでクロードに戦いを挑んできている。

 ――いや、違う。

 こいつはルード国なんか背負っていない。

 背負っているのは、自分の幸せ。

 自分の知っている範囲の幸せ。

 それを守る為に――手に入れる為に、自分なりの『正義』を掲げている。

 しかしながら、クロードはそれを蹂躙しなくてはいけない。

 当然だが、クロードの守りたい人の中にはコンテニューは入っていない。

 ならば、破壊しなくてはいけない。

 こちらも、自分の『正義』を貫いていくだけだ。

 クロードは両手を広げ、コンテニューに向かって宣言する。



「これから俺はお前の――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る