第291話 決戦 02

    ◆ルード正門



「何だあれは……っ!?」


 ルード国首都カーヴァンクルに通ずる門は四つある。

 それぞれ正門、西門、東門、南門と名は安易ではあるが、壁に囲まれたカーヴァンクルにて唯一、陸送にて中と外での往来が可能な場所になっており、それぞれが交易拠点ともなっている。それ故に入国管理とは別に入都管理も行っている他、その検査もかなり厳しくしており、そう簡単にはカーヴァンクルへ入ることすらできない。

 その象徴となるのは、大きな門。

 各門とも扉もなく武骨な大きなアーチ状の門ではあるのだが、それが味を出していると評判になっており、カーヴァンクルに入る目的ではなくこの門を撮影する観光客の来訪も多くなっている。いつの間にか観光名所となっているのがルードの策なのか否かは不明である。

 しかしながら、そのような形で少なくない人が来訪する場所になっている、かつ、開かれた扉であるがために、武力面の整備も万端である。

 当然ながらジャスティスも配備されているし、それ以外の兵器も充実している。しかもそれを見える形で配備している。視界に入ることで「景観を損ねている!」と文句を口にする人もいるが、堂々とは言えずにネット上で吐き出しているだけだ。それ程までに武力の威圧感は凄まじいモノがある。

 四か所、全てである。

 故に、今までこの門から攻め立てようとしたり、テロリズムのような行為をする者は誰もいなかった。

 いなかった。

 少なくとも、この正門の警護を任された軍事担当責任者の記憶上では誰一人としていなかった。

 しかし、それは既に過去形になっている。


「いつの間にあそこまで接近された!?」

「わ、分かりません!」

「誰も見ていないのか……っ!?」


 周囲の部下の反応に苛立ちを隠せずに机を叩く責任者。

 信じられなかった。

 窓の外に見える光景を。

 だが現実だ。

 史上最大の危機が迫ってきているのだ。

 そのことにようやく意識が向いた責任者は、部下に向かって大声を放つ。


「おい! 今すぐに本部に連絡を!」

「は、はいっ!」


 走り去る部下を見ながら、ギリリと歯を鳴らして外をちらりと見る。

 何度見ても同じ。

 同じ悪夢のような光景。


「何でだ……っ!」


 絞り出すような悲痛な声で、彼は誰も答えてもらえない疑問を空に投げた。



「何故相手側にあんなにも――……っ!?」



 その数は十を超えていた。

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