番外編 飲会 07
「キングスレイ総帥……酔いつぶれていたはずでは……?」
筋肉隆々の最高司令官は、何事も無い様に肩を竦める。
「なあに、私は寝たふりをしただけだよ。皆の本音を引き出すためには私の存在が邪魔ではないかと思うてな。うむ、なかなか普段は聞けない本音が聞けて大満足だ。目的達成だな」
そう言うと、キングスレイは席を立つとジェラスの元までやってきて、
「さて、お開きとしようか。このメンバーで一時間も持ったのは奇跡だ。ブラッドに感謝せねばな――これで足りるかな?」
十数枚の紙幣を手渡してきた。
「あ、いや何を飲み食いしたのかは分かりませんが、これは多すぎますよ。半分以下でも大丈夫かと」
「よい、よい。私がブラッドに依頼したのだ。残った分は君とブラッドで分けてくれ。美味しいものでも食べなさい」
「はあ……ありがとうございます」
「ではお先に失礼する。良い宴であったよ」
はっはっは、と笑い声を上げながら、キングスレイ総統は澱みなく店を出て行った。
残されたジェラスは一瞬呆けたが、
「……とりあえず、何だこれ、この飲み会……ああ神様、もしいたのならば今回の飲みに関してのみんなの記憶を無くしてあげてほしいなあ……」
と、最後の最後まで混沌とした状況に、祈りに近い感情をジェラスは口にしたのだった。
◆
後日。
店で睡眠を取っていた数人は、ジェラスがきちんと家まで送り届けた。
これだけでも幹事としてきちんと役目を果たした、と彼は安堵の深い溜め息を付きながらも、心の奥底ではキングスレイにこう進言しようと誓っていた。
――もうこのメンバー内での飲み会は絶対に開かない方がいい、と。
番外編 飲会 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます