第271話 後悔 05
「……クロードのせい? どういうことだ?」
ライトウの頭の中は混乱していた。
家族。
ライトウ達の家族というのは、きっと孤児院の人達のことを言っているのだろう。そこについては引っ掛かりはあまり感じなかった。
その家族は、ルード軍によって命を奪われた。
ヨモツ・サラヒカ率いるジャスティス空軍により、理由もなき襲撃を受けて。
事実はそれだけだ。
そこに、クロードが関わる要素は何もないと思われる。
――なのに。
クロードは神妙な面持ちで問い掛けてくる。
「……ライトウ。みんなの孤児院が襲撃されたのは、ごく最近だよな?」
「どこをごく最近と言っていいかは分からないが……まあ、そうだな」
「その孤児院襲撃の原因は、俺だ」
「……そこが繋がらないんだが?」
「ああ、すまない。えっと……」
言葉を探す様に額を掻くクロード。
その弱気な表情と発言に、こちらも不安になってきた。
今までのクロードと、あまりにもかけ離れていたから。
きっとミューズとカズマも同じような気持ちなのか、声を挟んでこないでじっとしている。
そんな異様な雰囲気の中、クロードは短く息を吐いて言葉を続ける。
「俺が魔王としてジャスティスを破壊することを世界に宣戦布告した頃……というか、その後だろうな。ルードは危機感を覚えたのか、俺と――俺の母さんが昔に関わったと思われる施設を襲撃した……んだと思う。同じような反乱分子がいることを恐れて」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
と、そこで思わずと言った所だろう、カズマが口を挟んできた。
「色々と整理がついていないのですが……クロードさんと僕達がいた施設って昔、何か関わったのですか?」
「ああ。忘れている……というか忘れさせられていると思うが、実際にみんなと会っている。ライトウの刀やアレインの走力とかは、俺が持っている能力によって与えられたものなんだ」
「えっ……? ど、どういうことですか……?」
ひどく動揺するカズマ。
それとは対称に、
(……ああ、クロードも知っていたのか)
ライトウは先に思い出した記憶とのピンポイントさに少々驚いただけで済んでいた。
自分が思い出したタイミングで、まさか同じ内容について言及されるとは――
(――違う。知っていたんじゃない。クロードもここ最近でその事実を知ったのだろう)
ライトウはすぐに思い直す。
もし仮にクロードがライトウ達が仲間になろうと持ちかけた時点から知っていたのであれば、現在のこのタイミングでその話を持ち出すのは非常におかしい。
ならばここつい最近――もしかすると、アドアニアでの対戦時に何かがあったのかもしれない。そう考えた方が正しいだろう。
そこで何らかのきっかけ、もしくは誰かから聞かされて、クロードはその事実を知った。動揺させられたからこそ、あれ程までにボロボロにされたのかもしれない。
(……となると、先の回想はいいタイミングでクロードとリンクしたのかもしれないな)
ライトウはその結論に至る。あれ程までに鮮明に記憶を回顧出来たのはそのような理由があったのか、と態度にも出さずに内心だけで頷く。
今はそのような場合ではない。
クロードはその事実から、自分達に対して深い負い目を抱いてしまったのだろう。
だからこそ謝罪した。
「クロード」
ライトウは前に一つ進んで口を開く。
言ってやりたかったのだ。
そんな彼に。
「もう一度、君が謝罪した理由を聞く。君が魔王として世界に反逆したから、俺達の孤児院が襲われた。だから謝罪した、と?」
「……ああ」
クロードの拳が強く握られる。
「加えて、君が俺達と過去に遭っていなかったら襲われていなかった。だから謝罪した、とも言うのか?」
「……そうだ」
「だから君が俺達の家族を殺したようなものだ、と?」
「ああ、そうだ……っ!」
強く。
感情を乗せた声でクロードは言い切った。
今までどこか無感情で無表情だった彼が、初めて吐露してくれた。
自分達に心を開いてくれた。
そのように感じて――嬉しかった。
嬉しかった。
そのような感情が湧き起こってくること自体、異常だと思われるかもしれない。
だけどそれも当然だ。
何故ならば、ライトウはクロードの言葉なんか――
「それは違うぞ、クロード」
――何一つ同意していなかったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます