第237話 開発 02
「……」
数瞬だけ目の前の光景について目を丸くした。
顎に手を当て。
もう一度目の前の光景をじっくり確認し。
二度頷き。
そして理解して、にっこりと笑顔を向ける。
「ああ、僕を嵌めようとしたのですか。その手には乗りませんよ」
「かなり失礼なことをされているのだけど、私、怒ってもいいわよね?」
そうアリエッタは眉を顰める。
「でも身体を隠そうとしたりヒステリックに叫ぼうとしたりはしていない当たり、先の僕の言葉は当たっていると思うのですけれど」
「別にあんたなんかに見られてもどうも思っていないからそのままでいるだけよ」
「僕も一応男なのですよ。そんな人の前で平然としているなんて、淑女としてどうかと思いますよ」
「あんたには言われたくないわ。私にあんなことをしておいて……」
あんなこと、とは、彼女がクロードと共謀した疑いで捕らわれた際に、コンテニューが彼女にした仕打ちのことであろう。
目隠しした状態で、三大欲求が制限されている男性囚人を送り込まれる時期も知らされずに放置されるという私刑だ。
(……そういえばあの後やられたのか、全く気にしていなかったな)
コンテニューにとってどうでもいいことだったのですっかりと忘れていた。実際に実行したのだろうか?
ならば本人に訊いてみよう。
「ああ、あれ、効きましたか?」
「……効いたわけないでしょう。私を誰だと思っているのよ」
アリエッタは、ふん、と鼻を鳴らす。
鼻を鳴らしながら着替えは続行している。
きっとひと肌を見られたりする、そういう行為自体に慣れているのだろう。
「そうですね。その若さで元帥まで上り詰めたからには、きっとそういう表に出せないこともあったのでしょうね。見くびっていました」
「……あんたが言うなとか色々言いたいけれど……まあ、いいわ。そういうことよ」
先程から何故か自信ありげに胸を張り続けているアリエッタ。半裸のままなので性的な要素がふんだんにアピールされている。意図的にやっているのなら彼女に対して性的な目で全く見ていないコンテニューに対しては何も意味のない行為であるが、しかしきっと彼女の様子から、無意識にやっているのであろうと推察する。そのようなことを無意識に男性に振り撒くことが最早習慣付いているのか――ということに気が付き、コンテニューは彼女に対して思うことがあった。
罰が足りなかったか、と。
反応から精神的ダメージを受けていると思い込んでいたが、実際はそうではなかったらしい。深く考えずに表面上で厳しい罰を与えたつもりだったのだが、実際にはへでもなかったということだ。
(次があったらもっと厳しくしよう)
その次があるかは全く不明だが、コンテニューはそう思って笑みを深くさせ、アリエッタに見せつけようとした所で、
「――あらあらまあまあ嘘付いちゃってー。コンテニューちゃんが指示したひどいことが行われる前に助け出してあげたじゃないー。忘れたなんてあたしゃ悲しいよ」
よよよ、と泣く演技をしながら話に入ってきた人物がいた。
セイレンだった。
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