開発
第236話 開発 01
◆
アドアニアの戦闘から幾何か経過した頃。
ルード国首都 カーヴァンクル。
中央に位置する軍本部。
その中にある開発塔の地下にある、とある一室。
そこは、ジャスティスの開発者であり、ミューズの実の母でもある――ルード科学局局長のセイレンの研究室だった。
「……」
その扉の前に多少強張った表情で立つ、一人の青年――いや、少年と言っていいであろう容姿の男性がいた。
彼の名はコンテニュー。
彼には先のアドアニアでの戦から思う所があった。
魔王クロードに裏の掛け合いで一枚上手を取り、彼に唯一と言ってもよい傷を負わせた存在。
世間一般にはその事実は隠されているが、真実を知っているルード軍内での彼の評価は鰻上りにあがっていた。
無敵だと思われていたクロードに傷を負わせ、撤退させた。
その衝撃たるや凄まじいものだ。
まるでジャスティスを打ち破った、あの時の魔王のように。
――しかし。
そんな名誉も賞賛も、はたまた尊敬の意も。
コンテニューにはどうでもよかった。
彼の頭の中には別のことが支配していた。
一週間。
ずっと考えていた。
どのようにすればいいか。
その結論が――嫌な相手に聞きに行く、ということだった。
「……情けない上に動きが遅い」
自分に対しての苦言を、敢えて口に出す。
嫌な相手とはその研究室の前にいることから分かる通り、セイレンのことである。
ここに来ることをどうにか避けようとして画策したのだが上手くいかず、最後の最後までやりたくなかったこの方法を取らざるを得なかったのだ。
結果論ではあるが、この一週間を無駄に過ごしてしまったことをコンテニューは悔やんでいた。
「……時間が無いっていうのに」
密かに奥歯を噛みしめ、苛立ちを抑える。
数秒の後、彼は大きく深呼吸をして落ち着いてきたことを確認すると、意を決した様に「失礼します」とひと声かけて扉に手を伸ばした。
と、そこで何故か目の前の扉が勝手に開いた。
そしてコンテニューは部屋の中心辺りでパイロットスーツを脱ぎかけている銀髪の美女――アリエッタの半裸姿を目撃することとなった。
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