敗退

第225話 敗退 01

    ◆





 アドアニア国。


 ウルジス国との交渉の二日前、ここで戦闘が起こった。

 ビルが立ち並ぶ都心ですら戦場になり、跡地は悲惨なモノとなっていた。

 そんな戦闘を起こしたのはアドアニア国とウルジス国ではなかった。


 ルード国。

 そして――『正義の破壊者Justice Breaker』。


 一国と、いち組織が激突した。

 『正義の破壊者』はウルジス国を配下に付けているので、実質はウルジス国として見ても間違いはないが、アドアニア国はルード国の配下に名目上だけで実質は第三国として存在していた。

 ――そう世間からも思われていた。

 だが、今回の戦闘で明らかになったことがある。


 アドアニア国は中立国ではない。

 明確な――ルード国の配下だった。


 ルード国の指示に従って自国の住民全てを別の場所に移し、首都を戦場にさせた。

 明確な主従関係がそこにあったはずだ。

 それを周辺国に悟らせなかったのは、とてつもない手腕であると褒めるしかないのだが、しかして、アドアニアは結局それを認めなかった。

 代わりにアドアニアが主張してきたのは、『正義の破壊者』に交渉を破断にさせられた、ということであった。

 当然、事実無根の事実であった。

 だがそれが事実ではないことを『正義の破壊者』は証明できなかった。

 それどころか、逆に相手は捏造した写真を使用し、如何にも『正義の破壊者』に所属している人間が破壊しているように見せかけたものをネット上にばら撒いていた。中には面が割れている幹部の一人、『サムライ』ライトウが街を破壊している映像すらあった。実際はルード国の総帥であるキングスレイが斬り倒したビルの映像でさえ、彼が実行したことにされており、キングスレイが関わった証など一切残していなかった。


 これが、ミューズがセイレンに負けて映像を奪われてしまったが故の結果である。


 反証材料が無いので、これが真実として世界に認識されつつある。勿論、全てが全て、アドアニアの言い分を信用したわけではない。それでも『正義の破壊者』に向かっていた世間の風当たりは、真逆に吹き始めていた。

 その意味であの敗北は非常に痛かったのだ。

 しかし、ミューズだけが悪い訳ではない。

 勝てなかったからこそ、好き放題にアドアニアに言われてしまっているのだ。


 サムライという異名で刀を振るうライトウも。

 ジャスティスを操る唯一の存在であるカズマも。

 更には――魔王クロードも。


 全員が全員、対峙した相手に後れを取った。

 誰か勝ってさえいればまだ何かが言えた。

 敗北の事実を隠さなくて済むのだ。

 故にこれは『正義の破壊者』全ての責任だ。



 そして、この情報が広まった結果――


 ――『

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