第217話 撤退 03
獣型ジャスティス。
その前足が、クロードの周囲に張り巡らせられた盾に叩きつけられた。
但し、真上から叩きつけるような攻撃であった為、まだ消していないエアクッションがその衝撃を吸収する。
だが、とある事実にクロードは目を疑う。
「……低い……?」
先程、上空からの落下の際は、三メートルくらいの所で止まっていた。
だが今は地面すれすれまで沈んでいる。
つまり――かなりの上空からの落下とほぼ同等の力が掛かったということだ。
物凄い力だ。
これが別ベクトルで力が掛かれば――
『―――!!』
再び何かの咆哮のような音がした気がした。
どうやらそれは、目の前の獣型ジャスティスが発している声らしい。
内容は分からない。
だが、かなりの怒りを含んでいることは分かった。
更に、その獣型ジャスティスが攻撃を仕掛けてきてから相手の銃弾が飛んできていないのも感じていた。きっとジャスティスに対して攻撃が当たらないようにしているのだろう。ジャスティスに普通の銃弾が効くとは思えないが、それでも味方への攻撃意志を見せないようにする意味があったのだろう。
つまり――獣型ジャスティスがクロードの近くにいる限り、一般兵は攻撃してこない。
(それならば――利用できる)
クロードは痛む腹部を押さえながら大きく息を吸い、そして言い放つ。
「そんな攻撃をいくらしようが、俺にまとわりついた盾は破壊できない。ほら。叩きつけた衝撃も全くないぞ?」
『―――!!』
更なる怒りの感情がクロードに降りかかってくる。
五メートル以内にいないので相手の思考は読めない。
だが、次の行動は手に取る様に分かった。
『―――!!』
獣型ジャスティスは真横から薙ぐような攻撃を仕掛けてきた。
(――掛かった)
クロードは相手の攻撃が来る方向に背を向け、その方向と逆方向の盾を空気に変化させて戻した。
次に倒れるように前へ身体を傾けていく。
直後――後方に強い衝撃を受けた。
メキ、と足が悲鳴を上げる音が聞こえる。
防御盾ごしに攻撃を受けたのだ。その衝撃を吸収しては意味が無いので、もろに受けた形となる。きっと足は骨折しているのは間違いないだろう。
だが構わない。
それと引き換えにクロードは初速を得た。
「……っ」
歯を食いしばりながら、背中に黒い羽根を生やす。
そしてクロードは狙い通り高速で空へとその身を飛び出させ、敵からの追従もなくその場から離脱することに成功した。
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