第207話 乱戦 18
右腕を引きちぎられたカズマのジャスティスは吹き飛び、大通りに再び投げ出される。
「ぐああああああああああああっ!!!」
カズマが悲鳴を上げる。
ジャスティスと痛覚を共有しているわけではない。
衝撃もあるが、それで悲鳴を上げている訳ではない。
それでも、声を上げざるを得なかった。
(何だこれはっ!? まるで魂を持ってかれるような痛みだ……っ!)
右腕が引きちぎられた瞬間に、自分の心臓が引きはがされるような痛みに襲われた。
だが、まだそこまでだ。
気を失う訳にはいかない。
ある程度、予測していたことではあった。
ジャスティスを破壊すればパイロットは命を落とす。
故に燃料は命である。
頭では分かっていたが、自分自身がピンチになる機会など全く無かったので実感できなかった。
「ぐっ……腕を千切られただけでこの痛みか……っ」
予想以上だった。
完全に破壊された際にしか効果は発揮されないと思っていたのに。
ずっと痛みが続いている。
パイロット席に座っている限り――
「……………………え?」
その時だった。
カズマはあることに気が付いた。
先に吹き飛ばされた時、かなりの衝撃を受けた。
内部にも当然、衝撃が来た。
「何で……?」
カズマは自分の真下を見て唖然とする。
現在、カズマがいる位置。
それはコクピット席ではなく、コクピットの中の床であった。
つまり座っていない。
「何で座っていないのに痛みが?」
単純に与えられた痛みが続いているだけ。
再起動していないから操縦桿を握っている人間に痛みが与えられている。
様々な理由は考えられた。
「……………………まさか!?」
だが、カズマはそう考えなかった。
ある考えに至ってしまった。
「命を使うのは……コクピット内にいる人物全員……っ?」
その思考の先にあるモノは、ただ一つ。
海軍元帥のジャスティスを破壊した時。
あのジャスティスの中には、操縦者のブラッド。
そして――妹のコズエ。
そのジャスティスを斬ったのは――
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
絶叫がコクピット内に響き渡る。
ずっと目を逸らしていた。
考えていなかった。
容易に予想が付く話であったのに。
コズエを殺したのはブラッドではない。
ルード国ではない。
他でもない――カズマだったのだ。
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