第206話 乱戦 17

 キィイン!! という甲高い音が響いた。


 獣型のジャスティス。

 ビルの隙間を低空で進んでいたその機体は、カズマの刀の攻撃を通さなかった。

 勿論、カズマは万が一にも止められないように背中の中心部を狙った。そこは前足が届くような構造ではない。

 従来であれば。


「……これは予想外だよ……」


 相手のジャスティスは、カズマの攻撃を真正面から両前足の爪で受け止めていた。

 で。


 そんな構造はカズマのジャスティスにはない。つまりはあの緑色のジャスティス特有の構造だということだ。

 だが、そのような構造があったとしても絶対にカズマは使わない。

 というよりも使えない。

 あれだけの急峻な動きをした際に生じるパイロット席での衝撃に、耐えうることが出来ない。

 普通の人間ならば気絶するレベルだ。

 だけど相手はきちんと意識を持っている。

 それが分かるのが、防いだ刀を持ったまま、カズマのジャスティスをビルに叩きつけようとしてきたことだ。

 強大なパワーに引っ張られる形で、カズマのジャスティスはバランスを崩し、右手が下方に位置してしまう。


 ――そこを相手のジャスティスは見逃さなかった。


 その右腕を緑色の両腕に掴まれる。

 掴まれ、引き落とされる。

 それだけではない。

 相手ジャスティスは下半身も回転させ、後ろ足も上に向けた。

 そしてその両足をカズマのジャスティスの胸部に向けて振り上げ――



 バギリ――という鈍い音と共に、カズマのジャスティスの右腕が引きちぎられた。

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