第203話 乱戦 14

「っ……!?」


 あまりにも圧倒的なその振る舞い。

 あまりにも圧倒的な実力。

 同じ刀だ。

 ライトウが先に持っていた刀だ。

 だからといって、ライトウに同様のことが出来るか?


(…………無理だ)


 道具ではない。

 剣士としての差が露骨に出てしまった。


 足が竦んでしまった。

 実力差を知ってしまった。

 故に思ってしまった。


(俺はこいつに――勝てるのか……?)


「うむ、良い刀だったな。――さて」


 怯んでいるライトウに向かって、キングスレイは言葉を投げる。


「サムライの名は偽りだったな。この刀のおかげだってことがよく分かった」

「……ッ」


 何も言えなかった。

 しかし、自分が努力を怠ったわけではない。

 鍛錬も続けていた。

 復讐に身を燃やしてジャスティスを斬っていた。

 無敗だった。

 だから刀以外でも――と言い返そうと腹部に力を入れた、その瞬間。


 その腹部に衝撃を受けた。


 脳が最初は付いていかなかった。

 だが、すぐさま痛みと共に理解が追いついた。


「返してやろうではないか、その刀」


 キングスレイの立ち位置は変わっていない。

 但しその手には、既にライトウの刀はなかった。

 では刀はどこに行ったのか?

 その答えは明白。


 刀は――ライトウの左腹部に刺さっていた。


「ガハッ!」


 ライトウが口から鮮血を吐き出す。


 熱い。

 痛い。

 苦しい。


 ぐるぐると思考が腹部の傷に集中する。


 叫びたい。

 痛みに狂って叫びたい。

 泣きたい。

 力の限り泣き喚きたい。


 だが腹部の傷がそれをさせない。

 声を発するのに力が入らない。


 真っ白だ。

 頭の中は真っ白だ。


 故に。

 キングスレイの言葉が嫌というほど聞こえた。


「お前は全力での攻撃なのに防がれた際、そのままこちらに攻め入ろうとせずに刀を引いたな。――折れるかもしれないと思って」


 確かにそうだ。

 あれだけ何でも斬ってきたライトウの刀が、初めて防がれたのだ。

 剣と刀。

 強度を比べれば刀の方が脆いに決まっている。

 ――そう決めつけていた。


 そして。

 決定的な言葉を、キングスレイは叩きつけてきた。



「お前は――

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