第201話 乱戦 12
同時に背後から大きな轟音が鳴る。きっとカズマが獣型のジャスティスとの戦闘を開始したのだろう。
しかし彼は振り向かない。
今の敵はただ一人。
キングスレイ。
彼を殺害すること。
ただそれだけに集中して刀を振るう。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
一気に距離を詰め、キングスレイの真正面を捕える。
完全に相手は油断していたのだろう。
これだけの距離を一瞬で詰められる足があるとは思っていなかったのだろう。
構えたまま微動だにしていなかった。
――右脇腹。
ライトウから見れば左側にある完全に空いているその隙間に、刀で一閃すべく横薙ぎを――
「――青いな」
鈍い音が響く。
ライトウは目を疑った。
完全に捉えたと思った脇腹。
キングスレイの身体とライトウの身体の間には、キングスレイが握っていた剣が防ぐように刀による攻撃を防いでいた。
「この程度か。何を驚いている?」
キングスレイは表情を変えずに、そして右足でライトウを吹き飛ばす。
吹き飛ぶ。
ライトウの体重は決して軽い方ではないのに、それでもかなりの距離を吹き飛んだ。途中での自動車などの高さを超すような吹き飛ばされ方をしたので、近くのビルまで勢いは止まらなかった。
「かはっ……」
肺の中の空気が全て出て、すぐに呼吸が出来ない。
苦しい。
そんな苦しみに悶えている最中、
キングスレイがいつの間にやらライトウの近くまで来ており、その剣を顔面目掛けて振り降ろしてきた。
「ッッ!!」
生存本能と言った方が正しいだろう。
完全に無意識に前方に身体を投げ出していた。
すぐ近くで剣が空振る音がした。
だが、危機一髪だった、で終わらせはしない。
ライトウは刀をキングスレイのいた位置に向かって全力で振るう。
しかしそこに敵の姿はない。
彼は少々離れた地点で顎に手を当てて頷いていた。
「ほう。避けたか」
「はあ……っ。はぁ……っ。はぁ……っ」
相手の言葉に反応できず、息切れをしたまま彼は立ちあがる。
――相手が攻撃してくる前に逆にこちらから攻撃を仕掛けなくてはいけない。
そう考えた彼は周囲のビルの壁を駆け上る様に蹴り上げ、高さを付ける。
「はああああああああああああああぁっ!」
気合を込めた、上空からの一撃。
青年とほぼ同等の体躯の少年の体重が乗った一撃だ。
真下にいるキングスレイに一直線に向かう。
食らうか。
避けるか。
――だが。
ガキイィン!!
金属音が響く。
つまりはキングスレイがその身に食らいも、避けもしなかったということでもあった。
彼はその剣で真正面からライトウの一撃を受け、流したのだった。
ライトウの身体はバランスを崩し――と見せかけて。
右足での鋭い蹴りが、キングスレイの腹部に襲いかかる。
(――真正面からの真っ直ぐな攻撃など通ると最初から思っていない)
だからこそ一撃を囮に使った。
この攻撃後の大きな隙をわざと狙わせた。
それこそがライトウの狙い通りだった。
ガッ、と確かな感触が右足に伝わってくる。
(当たった!)
そう確信した――のだが、
「――舐めているのか?」
「っ!?」
ライトウの右足は、確かに当たっていた。
――キングスレイの剣の柄に。
「確かに脚力はあるようだな。蹴りの威力も油断すると押し出されてしまいそうだ」
言葉を紡ぎながら、キングスレイはライトウの足を掴もうとする。
そのことに気が付いたライトウはすぐに足を引き、距離を取る。
「ふむ。判断も間違っていない。あと一秒だけ逡巡していたらその足を切り落としていた所だったからな」
その言葉が決して冗談ではないことをライトウは悟った。
背中に冷たい汗が落ちるのを感じる。
一瞬の判断が命取りだ。
嫌というほど感じさせられた。
だけど――
「俺は――お前を倒さなくてはいけない! 絶対にだ!」
「ほう。それは『正義の破壊者』としての使命感からか? それとも刀剣を扱う者としての意地でか? それとも――仲間を討たれた恨みからか?」
「全てだ」
「そうか。その意気やよし。――だが」
ゾッ、とライトウは一瞬身震いした。
唐突にキングスレイの方から、物凄い威圧感が発生したからだ。
殺意。
怒り。
強い感情が相手から放たれていた。
真正面からそれを向けられ、思わず立ちすくむ程のものだ。
剣気とも言っても過言ではないだろう。
放った本人は気を放ったままこう問い掛けてきた。
「サムライ ライトウ。その名は偽りか?
――何故刀で攻撃してこなかった!!!」
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