第195話 乱戦 06
ズズン、と。
突き破られたビルが支えを失い、音を立てて倒壊する。隣のビルもその倒壊に巻き込まれ、ガラスが一斉に割れる。
この崩壊は誰がやったのか。
言うまでもない。
カズマだ。
「何をしているんだカズマ!?」
『何をってジャスティスを倒したんだけど』
「そっちじゃない! ビルの中を突き進んできたことだ!」
結果的にビルは倒壊し、見るも無残な姿になっている。
ここはアドアニアの中心部。
周囲に人がいない森などではない。
そんな所での唐突な相手の襲撃なのだ。
避難警報も出していない。
ならば中には民間人が残っているはずだ。
ライトウだってそれを意識して戦ったが故に、先の時のような不意を食らったのだ。路地裏だったので足元のビルを斬り倒せばもっと簡単に相手に攻撃出来たにも関わらず。
彼はは激高する。
「避難もさせていないのにビルを倒壊させたら中にいる民間人は――」
『いないよ』
「……え?」
『民間人なんてこの国にいないよ』
ライトウは混乱した。
カズマは何を言っているのか理解出来なかった。
この国に民間人がいない? それは自分が殺したことを認めない為ではないのか?
――そう思ったのだが。
『勘違いされるかもしれないので先に言うけど、本当に民間人なんていなかったんだよ』
先の倒壊したビルから少し離れた地点でライトウを地面に降ろすと、突然、近くにあったビルの表面を削る様に剣を振るった。
何をやっているんだ! ――と声を張り上げる前に、ライトウの言葉が詰まった。
そのビルの中身。
そこには――何もなかった。
人も。
物も。
そこで人々が仕事や生活をしていた形跡あるものが、何も無かった。
あるのは空洞。
侘しいただの鉄骨の塊。
「どういうことだ……?」
『見ての通りだよ。――見ての通りしかない』
そこまで言われて――そこまで示されて、ようやくライトウは理解した。
アドアニア。
この国に付いてから出会った人々。
暮らしていた人々。
いや、それどころか――
「このアドアニアという国全部が――ルードが用意した偽物だったってことか」
『ご名答』
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