第180話 故郷 03
◆
アドアニア。
小国ながら、緑が豊かで食糧自給率も高く、また地下資源も豊富であるという、他国から羨ましがられるような国であるが、武力を持たず、政治的交渉によって上手く他国と付き合っていた。さらにその欠けている武力面も、二大国の一つであるウルジスと結ばれた平和協定から他国からの侵略にはウルジスが武力介入してくることになっており、実質、アドアニアは平和の国であるという認識を人々から持たれていた。
だがある時、ルード国のジャスティスによって蹂躙され、平和の国は戦場と化した。
ウルジスはその際に平和協定を破棄。
あっさりと降伏し、以降はルード国の支配下に置かれていた。
――つい近年までは。
魔王 クロード。
アドアニアは彼が生まれた国であった。
クロードとしても――魔王としても。
魔王と化したクロードによって、アドアニアにはジャスティスが存在していなかった。全て破壊されたからだ。
その恐怖の地となった国にルード国民は恐怖し、軍人ですら赴任したくないと拒否する土地となった。
その為、公表はしていないがルード国はアドアニアの占有を止めていた。
残されたアドアニアという国は、宣言はしていないものの、誰の支配も受けていない状態である――実質的な中立国となっていた。
ではそこにウルジスが入り込めばよかったのだが、ウルジスは過去に平和協定を破棄したという負の歴史がある。故に中立国とはいえウルジスが手を出せなかった国であったのだ。ルードもその背景がある故に放置していたのだろう。
しかし、戦局が進み、残り一国となった今では、どちらも無視できないはずだ。
加えて、クロードの出身国。
何も起こらないはずがない。
どの国も注視している中、ウルジスは動きを見せた。
先の平和協定の破棄を謝罪し、再び協定を結ぶための交渉の場を取り付けたのだ。
未発表にも関わらず、この話は世界中の耳に入っていた。
勿論、ルード国の耳にも。
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