第176話 苦心 12

    ◆



 その後。

 クロードの部屋に戻った二人は、うずくまって奇声を上げていたミューズの姿を目撃する。

 そこからカズマがここぞとばかりに彼女をからかいに走った。


 そして、その数刻後。

 ライトウが申し訳なさそうに戻ってきた。


 その彼の様相に先程までの剣呑さはなかった。

 代わりに、目元が赤くなっていた。

 きっとまだ振り切れてはいないだろう。

 だが、それでいい。

 振り切れていないからこそ、忘れないだろう。



 人間は忘れられた時に真に死す。

 故に――忘れられない限り、生きている。


 生きている。

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