第146話 空戦 04
◆
「ゲヒャヒャ! やるねえ、相手も!」
ヨモツは下卑た笑いを発しながらも、頭の中では別の事柄を思考していた。
作戦通りに一体はすぐに乗り捨てさせる用意をさせ廃棄させたのだが、それ以外に二体、相手によって破壊されてしまった。
部下を捨て駒にするつもりなどない。
捨てさせる一体についても脱出ユニットをすぐに作動させ、ジャスティスが破壊されると起きてしまう落命を避けさせた。もっとも、その一体以外のパイロットは残念ながら落命してしまったと思われる。
その事実に悲しむことよりも、相手の攻撃を賞賛する気持ちの方が先立った。
特に、機体の浮上開始時を狙った攻撃には舌を巻いた。
大砲くらいではジャスティス本体は破壊されないが、可翔翼ユニットは別だ。耐久性を上げてしまうとそれだけ重量が増してしまうから駄目だとセイレンから言われてしまっていた為、耐久力はジャスティスとは比べ物にならないくらい低くなっている。
この空を飛べるジャスティスの特徴は、開けた場所でないと離陸が出来ないということだ。それこそ木々などにより不調をきたす可能性があるからだ。だからこそこういう離着陸の場所を読まれたのだろう。
(空軍ジャスティスでの実戦がほとんどないことに着目して、そこまで読み切っていたんだろうな。っていうかジャスティスをぶった切れるあの刀野郎は何者だよ、本当に……)
名前は知っている。
ライトウ。
サムライ ライトウ。
だが実際に目の前にして、ジャスティスを容易に切り捨てられる相手を信じられないのも事実であった。
「でも、ま、関係ねえわな! ハッハァッ!」
ヨモツ、そして他二機のジャスティスは既に空中だ。相手の大砲など既に届かない位置にいるため、もう可翔翼ユニットを撃破される要素はない。
後は上部からの散弾により『正義の破壊者』をいたぶるだけだ。
三体のジャスティスで空を自在に飛び、森の中に潜んでいる相手を銃撃する。
設置してあった大砲を銃弾で破壊し、爆風で人が飛ぶ。
一般人が入っているとは思えないので付近にいる人影も銃弾で弾き飛ばし、爆弾で吹き飛ばす。
これが空を制するということだ。
空は広い。
圧倒的に広い。
対して地上は障害物がかなり多い。
その為、その障害物にも気を払わなくてはならず、上を見たままで逃げることは難しい。
そんな中で上からの攻撃を降り注いで行くだけで相手を圧倒できる。
実際、圧倒している。
それはジャスティス同士でも同じだ。
「ぐわああああああああ!」
「あああああああああああっ!」
二体のジャスティスを、あっという間に破壊した。
ジャスティスは通常の兵器が効かないだけで、ジャスティス用に設定すれば破壊できる。
その代表例が、必ず付属している刀剣類だ。
あの刀にはジャスティスのボディと同等の素材が混ざっており、微小な振動と合わさって斬ることが出来る。勿論、ジャスティスが斬れるということは他の何でも斬れるということと同等である。相手が乗っているジャアハン国特有の刀も同様である。
銃弾にも同素材を入れれば破壊できる。
もっとも、その素材の詳細を知っているのはセイレンだけらしいのだが。
故に――『正義の破壊者』がジャスティスに対抗する武器を、刀以外で持ちようがない。
つまり、空からの攻撃に反撃する手段を持たないのだ。
これで『正義の破壊者』の反抗も終焉――
「――とはいかねえんだよな」
にやり、と口端を上げる。
ようやく、といった所だ。
用意した舞台にあがってくれたのだ。
喜びも湧いてくる。
「ザコをいくら始末しても仕方ねえ! だよなあ? ――ブラッドのおっさんを倒したエースパイロットさんよぉ!」
ヨモツの視線の先。
そこには同じように可翔翼ユニットを身に着けた黒色のボディ――ジャスティスが存在していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます