第144話 空戦 02

    ◆




「――来たか」


 ヨモツは森林が動いたのを見て、敵の襲来を悟った。

 相手は十中八九『正義の破壊者』だろう。ウルジス国の可能性もあったが、彼らは表だって戦闘でルード国に刃向ってはこない。上の方で何か交渉事があるのか、ヨモツ自身がウルジス国と戦闘したことは無かった。今回も『正義の破壊者』という存在がある中で、サポートはしているかもしれないが、表立ってルード国に対抗してくることは無いと判断した。

 ハッキリ言って、ヨモツは政治に疎い。

 空軍元帥でいるのも、ハッキリ言って周りが持ち上げてここまで来ただけだ。

 実力はある。

 だが、政治力はない。

 それが自分で分かっているからこそ、同立場の人間に対しては傲慢な態度を見せているのだ。

 傲慢さはその裏返しなのだ。


 故にヨモツの本性は――


 ただ、臆病さは弱さではない。

 慎重さはむしろ強さだ。


 ヨモツは臆病で慎重を期す。

 故に考える。


(……『正義の破壊者』の所有しているジャスティスは一体と聞いている。となればどの方向から来るのか……?)


 ヨモツは瞠目し、音に耳を集中させる。

 ガサリ、という音は東から聞こえる。

 東ならば予定通り。

 一番隠れやすく、一番、襲撃しやすいポイントにしておいた。

 だったらこのままで――


 ……


「――違う!」


 ヨモツの目が開く。

 彼の耳には確かに聞こえた。

 東とは逆――西


 認識した瞬間、思考を切り替える。


 前提が違った。

 思い込みだった。


 咄嗟に通信を開き、全パイロットに告げた。



「気を付けろ! 『正義の破壊者』はジャスティスを――!」

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