第141話 前段 03
◆
太陽が沈み、辺りが暗闇に包まれてきた頃。
ウルジス領のとある場所でゴーグルを掛けて整列している数人の前に立つ一人の男性。
彼の名はヨモツ・サラヒカ。
空軍元帥である。
そして彼の目の前で整列している数人の男性は、空軍ジャスティス――空中部隊のパイロット達であった。
彼らは真剣な顔をして、各々思考していた。
どうする。
どうすればいい。
自分はどうするべきか。
皆の思考はそこに集中していた。
やがて、静寂が破られる時が来る。
どうするのか意志が固まった者、まだ決めかねている者、様々な人物がいる最中、自然と皆の意識が片手に集められる。
そしてヨモツの次の一言で、皆は弾けだす様に片手を差し出した。
「じゃーんけーんぽん!」
「よっしゃ勝った!」
「はん! 当然だぜ!」
「ああっ! ずるいですよ隊長! 今ちょっとタイミングがずれたせいでチョキになっちゃったじゃないですか!」
「言い訳してんじゃねえよ」
「そうだそうだ。きちんとした手が出ないのは決断できないてめえの女々しい心が出たんだろうが」
「そんな奴は最初っから戦場に出せねえよな」
「くっそぉ……それだけでこんなふるぼっこにしやがって……」
仲間を恨めしげに見る人物の肩を、ヨモツは叩く。
「ま、どうあがこうとお前の負けだ。残念だったな」
「うう……」
「というわけで――」
ヨモツはにやりと笑う。
「お前のジャスティス――戦闘中に廃棄してもらうからな」
「……了解しました」
悔しそうながらもパイロットの一人は首を縦に振った。
だが、これはパイロットという職業についてクビの宣言ではない。
じゃんけんなんかで決められているのであれば、流石の彼ももっと抵抗するだろう。
誰もが分かっているのだ。
ヨモツが立てた作戦には、誰かが貧乏くじを引かなくてはいけないということを。
更にそれは、ヨモツ自身が対象になる可能性も含んでいたということを。
故に誰も文句は言えなかった。
「さて、皆の衆。明日はいよいよ『正義の破壊者』との決戦だ」
ヨモツは手を一つ叩く。
「俺はブラッドのおっさんのようなへまはしねえ。だからこそ、相手を舐めた真似はしねえ。全力で叩き潰す。その為に工作もする。当然のことだ」
月夜を見上げ、ヨモツは告げる。
強い意志を持って。
「俺達は明日、『正義の破壊者』を叩き潰す。絶対にな」
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