番外編 聖夜 03

  ◆カズマ



 翌日。

 とある国のとあるショッピングモール。


「じゃあここからは三人分散、ということで」


 カズマが一つ手を叩くと、サングラスを掛けた少年と帽子を目深に被った人物は頷き、その場を離れた。


「……はあ。大丈夫なんでしょうかね」


 二人の姿が見えなくなると同時にカズマはポツリと一言漏らし、彼らとは逆方向に歩き始める。

 ――大丈夫か。

 その意味は二つある。

 一つはライトウのこと。

 彼はあれから一睡もしていない。余程悩みに悩んだのだろう。


(判断力が低下して変なことしなきゃいいけど……)


 そこは心配しても仕方がない。彼も大人なのだからどうにかするだろう。

 そう割り切ることとした。


 そしてもう一つ。

 

(クロードさんにあんな態度や口を聞いてしまって大丈夫だっただろうか……?)


 一時、悩んでいたこともあった。

 あれからメンバーも増えた。

 メンバーを増やし際に選別も行った。

 しかしその選別方法は、人道的とはとても言えなかった。

 時には相手を死に至らしめることがあった。

 それらはクロードが指示したとはいえ、ほとんどの指示系統には自分が入っていた。

 自分が殺害させてしまった。殺してしまったのだ、と悩んだ。

 場違いに一瞬、クロードに恨みを思ってしまったこともあった。


 しかし、いくつかのトラブルを未然に防げたことがハッキリと分かっていた。

 仕方のないことだったのだ。


 同時に気が付いた。

 クロードが一番、業を背負っているということを。


 彼だって殺人狂ではないし、望んで人を殺害しようとしている訳ではない。

 昨日の反応からも、至って普通の感性も持ち主でもあるのだ。


 そう割り切れてからは楽になれた。

 心に余裕も持てた。

 

 からといって、いきなりあんな口調で言ってよかったのだろうか。

 クロードの反応も悪くないから大丈夫だろうと思いつつも、心配事として心の中でのもやもやはあったのだ。


「……まあ、それは後で考えましょう。それより――」


 とカズマは目当ての店を見つける。

 彼が向かったのはアクセサリ屋。

 それはミューズに対して思う所があったからなのだが――



「……ん?」

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