第130話 交渉 09

    ◆



(うーわー……)


 ミューズは内心の驚きを表情に出さないようにするのに必死だった。

 その驚きは、先のウルジス王の提示した条件に関してだった。


 内容については想像していた。

 だが全てを想像していた訳ではなかった。

 例えば四番目。

 あそこまで自分達の欲を明確にしてくるとは想像だにしていなかった。

 クロードとミューズで想定していたのは以下のようなものだけだ。


 ウルジス国が『正義の破壊者』と同盟を結ぶ、もしくは傘下に入れようとする。

 その際の条件として金銭的支援や敵対意志がないことを見せる。

 目的はウルジス国の領土拡大と最大戦力確保の為。


っすね――)


 彼女は黒衣のマントを羽織った少年に視線をちらと向ける。

 彼は椅子に座った状態で瞠目していた。


(……流石に寝ていないっすよね?)


 ここ数日一緒にいたがそもそもクロードの寝ている姿を見たことが無いな――なんて思いながらも、じろじろと見ると自身のアリエッタの姿の行動としては不適合ではないかと視線を元の真正面に戻す。


「あの……クロード殿?」


 ウルジス王が困惑したように眉を歪めた。

 あれだけの内容について反応が無いのは不安だろう。

 だが大丈夫だ。

 クロードはきちんと聞いている。

 そして――


「聞いているよ、きちんと」

「ッ!」


(やっぱり――話を訊いた上で、っすね)


 ミューズは理解していた。

 彼の余裕の態度がそれを示している。

 そして、それを裏付けるように、


「……決めた」


 彼の口からもそう発せられた。


 ウルジス王の提案。

 非常に魅力的な提案だ。

 同盟を組むと言うだけで『正義の破壊者』に対しての資金面や食料面など、膨れ上がったメンバーへの、今は表面化していない問題に対して解決策が打てる。

 実際金銭面や食料は各人が各々調達してくる。そこに犯罪行為などは絶対にご法度だが、何とか成り立っていた。それは偏に『正義の破壊者』がただ単にジャスティスを憎むための集団であるという事実からの、ある意味ボランティアに近い形であったがために成り立っていたが、組織として肥大化して行けば待遇や給金などの問題も発生する。クロードの手にかかればそこに対しても金策は出来ると思うが、あまりにも一人に負担を掛けさせる上に、クロードにメリットが無い。クロード自身は『正義の破壊者』という組織ではなく、個人であってもよいわけなのだから。

 だからこそ、ミューズとしての本音は、ウルジスからの提案を受けるべきだと考えている。

 それが相手の罠だとしても。


 ――だが。


(クロードは


 彼の思考は単純明快。

 故に進路も単純明快。


 彼女が思わず笑みを表面に出してしまったと同時に、隣の少年から回答が発せられる。




「ウルジス国と『正義の破壊者』は

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