第118話 来訪 06
◆
「――これが、あの襲撃の時の経緯だ」
「成程。たまたま五人が施設にいなかった、というわけなんだな」
「ああ。だから生き残ったのは本当に運が良かったからなんだ。俺達は無力なただの子供だった……」
唇を噛みしめるライトウ。当時の不甲斐無さを思い返しているのだろう。
当時は誰もジャスティスを誰も撃破したことが無かったのだから、遭遇してしまったら無抵抗に蹂躙されるしかなかったのだ。人々の意識もそう根付いていた所だろう。だからライトウの刀の腕が存分に発揮できなかったことも頷ける。
だが、クロードには頷けない部分がある。
(……五人だけが生き残ったのは偶然なのか?)
特殊技能を持った五人だけがピンポイントで生き残っている。しかも、ライトウの話では特殊技能を持っていなかったライトウの弟が輪から外れたタイミングで。
もしルード側がその特殊技能に恐れをなして襲撃したと考えれば、生き残るのは逆のはずだ。
だからこそ、理由が見つからない。
まるで天が意図的にこの五人を生かしたかのような――
(……馬鹿馬鹿しい。何を考えているんだ、俺は)
クロードは表には出さず心の中で頭を振る。
(天などない。神などいない。――そんなの十二分に分かっているじゃないか)
くだらない思考を強制的にシャットダウンするべく、クロードはライトウに声を掛ける。
「すまない。辛いことを思い出させたな」
「気にするな。今考えると事前に話すべきだったと思っているからな」
ライトウは口の端を上げて告げる。
「俺達がヨモツに意図的に逃がされたわけじゃない、ってことを」
そう。
クロードが彼らの扱いについて考えた理由が、ヨモツの意図で生かされているか否かだった。もしヨモツの意図だったら、逆に彼らを戦場に行かせるのはどうかと悩んだ所だ。
「だがそれを言っていいのか? 気が付いていた、ってことで先の過去の話が嘘を付いているかもしれない思われるぞ?」
「それはないだろう」
ライトウは断言する。
「だって俺が裏切っていたり嘘を付いていたりしたらお前の能力で分かるだろ?」
「……気が付いていたのか?」
「あれだけやればな。何の能力かまでの詳細は知らないが、少なくともクロードに不利になるようには動けないものだとは認識している」
「そうか。まあ、その通りなんだがな」
コズエのようにどういう条件なのか、どこまでの能力なのかまでは分かっていないようだ。その方が底知れない形になって良いだろう。敢えて教える必要はない。
「で、その能力を使って、お願いがあるんだ」
「何だ?」
ライトウは立ち上がると、自分自身の胸に手を当てる。
「俺の身体を改造してほしいんだ」
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