第117話 来訪 05
◆
俺達は中心街から森を挟んだようなはずれにある施設で、ごく普通に暮らしていた。貧しかったけど、貧しいなりに工夫して、不自由はなかった。
大人達もみんな優しく、フィクションであるようないじめや暴力沙汰なんて何もなかった。
この施設はかなり古くからあるらしく、現在の職員は全員が施設出身だったらしい。
前にカズマが言っていたと思うが、その施設の経営者は俺の親だった。施設で出会ってそのまま結婚したパターンだな。
ここまで聞けば分かると思うが、正確には俺は施設の子じゃない。だが、一緒に暮らしていたんだから、それは言うなってアレインに言われててな。
それは置いておいて……それ程までに居心地のいい施設だったんだ。そのまま親の自慢になるからそこだけはアピールしておく。
で、子供達の中では俺が最年長だったな。高校卒業したら同じように職員になろうと思っていたんだけどな。親の後を継ぐ意味でも。
ん? 俺の年は一七だぞ。……もっと年上だと思った? 二〇代前半? ……地味に凹むぞ、それ。
話を戻すぞ。
そんな中でも、アレイン、ミューズ、カズマ、コズエ――そしてもう一人、俺の弟のブライの六人はよくつるんで遊んでいたな。特殊技能を持っている人間同士、秘密を共有するみたいな感じでつるんでいたな。
因みにブライには何の技能もなかった。それは兄である俺が証明する。弟はまだ幼くて俺についてきていただけだ。
……楽しかったなあ、あの時は。
そんな風に幸せに暮らしていたある日のことだった。
俺達は食糧の買い出しに行っていたんだ。ブライだけはその日風邪を引いて施設で留守番となっていた。
そこまでは今までと同じで、森を抜けて施設まであともう少しの所だった。
――本当に唐突だった。
いきなりジャスティスが空から降ってきて、施設を襲撃したんだ。
轟轟と燃えている施設と一体のジャスティス。
スピーカーで喧伝していたから分かった。
空軍元帥 ヨモツ・サラヒカ。
あいつが俺達の国を攻めてきたんだ。
何故だか知らないが、真っ先に狙ってきたのが俺達の施設だった。
燃え、崩壊している施設を見て呆然としたよ。
思わず弟とか他の子を助けに行こうと、森の中から飛び出そうとした。
だが――そこで父親に止められた。
父親は撃たれたらしく既に息も絶え絶えだった様子で、俺達の姿を見ると「逃げろ。もうお前達しかいないんだ」と伝えてきた。
それでも渋った俺達だが、父親は急に奇声を上げながら俺達から離れ、平地を駆けて行った。
直後、父親の身体が四散した。
……あの状況は未だに目に残っている。目の前から一瞬で消えたように見えたのに。
だが、そこで唖然としている場合ではなかった。
俺には分かったんだ。
父親は逃げたんじゃない。
俺達を庇う為にわざと離れたのだ、と。
そこからは持っていた食糧が多かったこともあり、五人で隠れながらどうにかここまで生きて来られた。
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