第115話 来訪 03

「ああは言ったが……」


 良かったのだろうか――と、カズマが退室して行った後の部屋の中で、クロードは後悔していた。

 カズマに対して、ジャスティスを増やしたかったら勝手にやれ。その責任は取れ、と投げ出したようなものだ。

 組織をどうでも思っていないクロードでも、流石にその投げ方はどうだろうと少し悩む所ではあった。


「……まあいいか。カズマに任せよう」


 だが悩んだのはほんの少しの間だけ。

 すぐに思い出す。

 コズエが死んだ時に誓ったではないか。

 、と。

 故に、どう判断してその結果がどうであろうが関係ない。

 どうでもいいのだ。

 出来なかったら、後で自分がやればいい。


「それにしても……やはり、か」


 クロードは先の言動に一つ、意図した情報流出をさせていた。

 それは、ジャスティスを破壊されるとパイロットの命が失われること。

 これは誰にも伝えていない事実だ。

 だが、恐らくはミューズとカズマは理解しているだろう。


(ということは、妹を死なせたのは自分であるということにも気が付いているのかもしれない。……いや、気が付いていないふりを無自覚でしているんだろうな)


 故にズレた行動を普段は行っている。

 まともなようでまともじゃない。

 でも、だからこそ、このまま突っ走ってもらうしかない。

 妹の敵を取るという一心で、他のことを切り捨ててでも。

 それが偽りの敵であっても。


「まあでも、元の施設を襲撃された時点で偽りでもないのか」


 カズマの復讐対象の第一は、彼らの施設を襲撃し破壊したヨモツだ。

 きっと彼の思考はこうなっているだろう。


 ヨモツが施設を襲撃しなければ、コズエは外に出ることもなかった。

 戦いに身を委ねることもなかった。

 ブラッドに囚われることもなかった。

 だから死ぬこともなかった。

 だから――だ。


「――さて、どうなることやら」


 そうなってくれるといいな程度に留めて置いて思考を止め、再びソファベッドに横になろうと身体を起こした所で――


 トントン


 再び扉がノックされた。


「……どうぞ」


 休むタイミングを逃してしまったが故に少々不機嫌な声になってしまったらしい。加えてテンションもいつもより低めに聞こえたようだ。

 バツの悪そうな表情でその人物は入室してくる。


「すまない。眠ろうとしていた所だったか?」


 ライトウだった。

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